- pn接合とショットキー接合とは?
- オームの法則から外れるもの
- pn接合の重要性
- pn接合のIVカーブの求め方
- マクスウェル方程式からポアソン方程式の導出
- ポアソン方程式
- pn接合のしくみと電荷分布[ステップ1]
- 電荷二重層の電位はどうなっているのか[ステップ2]
- pn接合の平衡状態
- pn接合に外部電圧をかけると何が起こるか[ステップ3]
- ショットキー接合の作り方
- ショットキー接合のバンド構造
- オーミック接触
- おまけ(パソコンの熱問題)
- 参考文献
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このセクションからpn接合とショットキー接合について理解します。pn接合はp型半導体とn型半導体を接合させたものです。ショットキー接合とは金属(導体)と半導体を接合させたものです。接合の対象が半導体同士が前者、導体と半導体が後者になります。
なんで、こんなものを学ぶかというと、例えば、価電子帯の電子に光を照射してエネルギーを与えて、伝導帯へと励起させ、自由電子を生成させる話を以前したかと思います。以下の図を思い出してください。

自由電子が沢山生成されれば、電気を大量に流せて、デバイスの制御にも役立ちます。しかし、電子が光のエネルギーを都合よく受光して伝導帯へ上がってくれるかと言われれば、そんな都合のいいお話はありません。もちろん、人間がちゃんとそういった状態になるように整備する必要があります。例えば、pn接合によって空乏層を作るなどをして光のエネルギーを受け取れる状況を作ります。これから詳しく述べますが、これらの接合は一番重要な部分になるということです。トランジスタなどの話へ持っていくためにも重要な最初のステップになります。
では、pn接合とショットキー接合の特徴を理解していきましょう。
半導体中を流れる電流でもオームの法則成り立ちます。これを以下に図示する。

電流と電圧には正比例の関係があり、電子デバイスを制御するとなると、この特性を外れたものに出来れば大変便利です。
例えば、家庭で使われている電源は交流電流です。皆さんはデバイスのコンセントを壁に繋いでパソコンや冷蔵庫や色々な家電製品を日々使っています。この交流電流とは回路に電流が時計回りと反時計回りの両方に電流が流れることを言います。もし電流を一方方向だけ流れるように制御出来たらかなり便利です。この制御を上手く組み合わせることで電子デバイスを面白おかしく作ることが出来るからです。このようなお話をするのですから、もちろんそういう制御ができる方法はあります。例えばダイオードというもの回路に組み込むと、電流を一方方向にしか流さない作用を作ることができます。このように一方にしか電流を流さない作用を整流作用と呼びます。以下にそれを図示します。

ということで、整流作用というものが理解出来ました。この電流と電圧特性をIVカーブなんて言ったりもします。ちなみに、理想的という言葉が目に付くかもしれませんが、現実は理想とは違うので理想的という言葉が使われています。以下は私が学生実験のときにダイオードを使用して整流作用を調べたときのIVカーブです。

これは私が実際に調べたときの挙動で、ダイオードに正の電圧をかけてもすぐには電流が流れませんでした。この領域を不感領域と言ったりします(理想は不感領域は存在しない)。それに電流と電圧もオームの法則のような比例的な直線的にはならず、ある電圧の閾値を超えた瞬間に爆発的に電流が上がりました(理想はオームの法則)。つまり上図のように指数関数的に直線ではなく曲線的増加になったのです。つまり、現実と理想ではかなり違いがあるので、それを区別するためによく理想的という言葉が使われます。
話を整流作用に戻します。pn接合もショットキー接合もこの整流作用と言う特性を持っています。
これらについて話をすると、実はこの2つは同じ形をしたIVカーブを持ちますそれが以下の図です。

このグラフではマイナス電圧に対しては電流が一定の値に飽和(収束)します。つまり、マイナスに電圧をかけると僅かにしか電流は流れないということです。これを飽和電流と言います。そしてプラスの電圧に対しては指数関数的に電流が増えていきます。つまり、これは整流作用を持っていると言えます。しかし、マイナス側の電圧に対してわずかに電流が生じるので(飽和電流)、完全な整流作用ではありません。また、プラス側の電流-電圧特性もオームの法則の比例関係(\(V=RI\))ではないので、仮に電圧がサイン波であったとするとこの接合を通り抜ける電流の形はサイン波からひずみます。
pn接合の用途は整流作用だけではありません。一応、まとめておくと、pn接合には
- 整流作用・・・電気回路においてある一方向にのみ電流が流れる機能
- トランジスタ・・・pnp構造やnpn構造にして信号を増幅したり、スイッチを動作させたりする半導体素子
- 受光・・・光を電気(電子)に変えること(例 : 太陽電池やフォトダイオードなど)
- 発光・・・電気(電子)を光に変えること(例 : 半導体レーザーや発光ダイオードなど)
などの特徴があります。光と電子の間には密接な関係があり、これを上手く使うことで色々なことができます。これらの関係は第6講で扱います。
何はともあれ、pn接合が凄く役立つ代物というのは少しはイメージして頂けたでしょうか。この第4項ではこの整流作用を理解するためにこれからIVカーブについての求め方を説明する。
整流作用を理解するということはIVカーブを求めることになります。なぜなら、電流と電圧の特性が整流作用にとって重要だからです。ですので、この求め方を理解しましょう。
3ステップで求めましょう。
- pn接合の空間的な電荷分布を求める
- この電荷分布より、電位の空間分布(電位分布)を求める(数学的にはポアソン方程式を解けば求まる)
- 外部電圧をかけて電位分布の形を変えたときの拡散電流を求める。このとき第3講で導出した電流連続の式を用いて拡散電流を求める。
これらを理解するために少しだけ電磁気学に触れておきましょう。ちなみに物理学において、~学と付くものは完成された学問になります。
電磁気学ではマクスウェル方程式と呼ばれる4つの方程式があり、この4つの方程式で電場磁場に関わる現象を全て記述することが出来ます。さらに本質的に言うならば、マクスウェル方程式は光(光子)を記述する方程式です。しかし、そこまでやろうとすると、電磁気学でこのセクションが終わるので、ポアソン方程式の導出まで紹介します。
以下4式がマクスウェル方程式です。ざっくり説明するので軽く読んでください。
- \(∇・E(r)=\frac{\rho (r)}{\epsilon}\)
- \(∇・B(r)=0\)
- \(∇×E(r)=-\frac{\partial B(r)}{\partial t}\)
- \(∇×B(r)=\mu \epsilon \frac{\partial E(r)}{\partial t}+\mu j\)
今、ポアソン方程式の導出に必要なのは最初の式です。これはガウスの法則から導かれた方程式で、この方程式が何を言っているかと言うと、電場は電荷があるところから湧き出ているのだよ、ということです。
電磁気学の講義はまた別にやるので、ここでは軽く説明をします。
位置\(r\)での電場\(E\)と電位\(\phi\)には以下の関係があります。
$$ E(r)=-∇\phi (r)$$
$$∇=(\frac{\partial }{\partial x},\frac{\partial }{\partial y},\frac{\partial }{\partial z})$$
上式から、\(∇\phi (r)\)は電位に対する各座標の微分を取っていることを意味しています。
そして負の符号の意味を説明します。電位\(\phi (r)\)はスカラーであり、ベクトルのような方向がありません。電位のような量をスカラー場と言います。しかし、ベクトル成分を持つ∇をスカラー場に作用させると、\(∇\phi (r)=(\frac{\partial \phi (r)}{\partial x},\frac{\partial \phi (r)}{\partial y},\frac{\partial \phi (r)}{\partial z})\)は各座標を持ち、つまりxyzの方向を持つベクトルになります。このような電場のようにベクトル量を持つものをベクトル場と言います。マイナスが付くのは、電場は正の電荷から負の電荷へと方向を持ちます、そのため、\(∇\phi (r)=(\frac{\partial \phi (r)}{\partial x},\frac{\partial \phi (r)}{\partial y},\frac{\partial \phi (r)}{\partial z})\)の各座標を見ると、プラス方向のベクトル場です。これを正から負の方向電荷方向へ電場が向かっていると表現するには、マイナスの符号を掛けてやればいいというわけです。イメージ図を図示する。

故に、電場は
$$E(r)=(E_x,E_y,E_z)=-∇\phi (r)=-(\frac{\partial }{\partial x},\frac{\partial }{\partial y},\frac{\partial }{\partial z})$$
これをマクスウェル方程式の第1式に代入すると、
$$∇・E(r)=-∇・∇ \phi (r)$$
・は内積です。内積はベクトル同士だとスカラー量になります。例えば、3次元成分の内積だと、(2,3,4)・(5,9,8)=2×5+3×9+4×8のようにx,y,z成分それぞれの積の和になります。よって、
$$∇・E(r)=-∇・∇ \phi (r)=-Δ\phi (r)=-(\frac{\partial^2 }{\partial x^2},\frac{\partial^2 }{\partial y^2},\frac{\partial ^2}{\partial z^2})\phi (r)=\frac{\rho (r)}{\epsilon}$$
と表現できます。これがポアソン方程式です。ちなみに∇・∇=Δという表現はよく電磁気学の参考書で見かけます。これは二階微分を含んでいることを意味しており、ラプラシアンともいいます。ポアソン方程式を使うときは、電荷密度の分布\(\rho (r)\)がわかっているときに、電位\(\phi (r)\)を求めるときなどに使います。
かなり便利です。他のマクスウェル方程式も説明したいですが、今回はポアソン方程式の導出までで留めておきましょう。
さて、話を半導体に戻します。半導体の中で電荷が空間的にどのように分布しているかがわかっているときに、その電荷\(\rho\)から電位\(\phi (r)\)を求めるのに使うのがポアソン方程式です。
ポアソン方程式は以下のような形をしています。
$$(\frac{\partial^2 }{\partial x^2},\frac{\partial^2 }{\partial y^2},\frac{\partial ^2}{\partial z^2})\phi (r)=-\frac{\rho (r)}{\epsilon}$$
左辺は電位を位置座標x,y,zで2階微分したものです。右辺は電荷密度\(\rho (r)\)と誘電率\(\epsilon\)です。右辺の電荷がゼロのときはラプラス方程式と呼ばれます。電荷があるときの電位はポアソン方程式、電荷がないときの電位はラプラス方程式から求めるということになります。
ポアソン方程式の起源はクーロンの法則にあります。クーロンの法則とは逆二乗則で表現された電荷による力の引力と斥力のことです。クーロン力(Coulomb’s force)とは電荷\(q_1.q_2\)がある空間にあったとき、
$$ Coulomb’s force ∝ \frac{q_1q_2}{r^2}$$
と表現できます。
クーロン力は物理学の発展の後に2つの現象に分解できます。
- 電荷\(q_1\)があるとき、その周りに電場が生じる。
- その電場が、もう1つの電荷\(q_2\)に働いてクーロン力を生じる。
このうち、1がマクスウェル方程式の最初を表すガウスの法則と呼ばれるものです。ポアソン方程式はガウスの法則の変形なので、色々な言葉が出てきていますが、やっていることはとてもシンプルです。
電場は正の電荷から負の電荷へ向かう、人間の目には見えない媒介手段みたいなものだと考えてください(近接作用論と言ったりします。目に見えないものが媒介するという考え方が登場する以前は遠隔作用論という考え方でした)。
シンプルに考えるために、ポアソン方程式の1次元空間として扱いましょう。
$$-(\frac{d^2 }{dx^2})\phi (x)=\frac{\rho (x)}{\epsilon}・・・①$$
電荷密度が場所に依存しない場合、\(\rho (x) = const\)(一定の値)である。このときの、方程式の解は非常に単純です。
$$\phi (x) =ax^2+bx+c$$
と置いて考えます。a,b,cがどのような値であるかわかれば電位がわかります。この電位を①式に代入して二回微分をすると、
$$a=-\frac{\rho}{2\epsilon}$$
と求まります。
このとき、aの値が負か正かわかれば、この二次関数の大まかな形がわかります。
例えば、\(\rho > 0\)なら、これは一様なプラス電荷なので、a < 0となり、電位の形は上に凸な二次関数となる。また、\(\rho < 0\)なら、これは一様な負の電荷なので、a > 0となり、電位の形は下に凸な二次関数となる。
この関係を頭に入れておくと、半導体のどこかに電荷が溜まったときに電位の形がどう変わるか容易に推測することができる。
aに比べて、グラフの形を決める上で、bやcはおまけみたいなものですが境界条件を設定することで求めることができます。例えば、領域1と領域2があったとして、それぞれの領域の電位が\(\phi (x),\phi ‘(x)\)と置いたとき、これらの領域が隣接するとき、電場が滑らかであるとすると、当然、電位の一階微分が電場なので、これらの傾きは等しくなる。つまり、以下のようになる。
$$\frac{d}{dx}\phi (x) = \frac{d}{dx}\phi ‘(x)$$
詳しいことは電磁気学を真面目にやれば、わかるので割愛します。ここでは電位のグラフのざっくりとした形が電荷が正か負かに依存しているということだけ頭に入れておいてください。
ポアソン方程式から電荷分布が分かれば電位が分かることを理解したので、pn接合について取り組む。
pn接合の整流作用の秘密を理解しましょう。
まず、p型半導体とn型半導体を接合させたときに何が起こるのか見ていく。
n型半導体には電子が多く、p型半導体にはホールが多いです。そのため、接触させるとpn接合の境界付近では電子はp型半導体へ拡散し、ホールはn型半導体へ拡散します。しばらくすると、この接合部分は、n型半導体から電子が抜けたところはホールになるのでプラスに帯電し、p型半導体はn型半導体から電子が入ってきたのでマイナスに帯電します。そして、電荷があるところに電場は発生する(プラスの電荷からマイナスの電荷方向に向いている)。これまでの話は以下のように図示されます。

上図のように接合近傍の帯電した領域を電荷二重層と呼ぶ。プラスとマイナスの2つの電荷の層がある、なんの捻りもない名前のまんまの意味です。この電荷二重層がpn接合の空間的な電荷分布になります。
この電荷二重層では電場が発生します。そのため、ホールと電子はこの領域でそれぞれ押し戻されて、拡散は止まる。これが平衡状態です。この電場のせいで電荷二重層のキャリアは押しのけられて激減する。つまり、ここに存在できるキャリアは電場による力に押し戻されない運動エネルギーを持っているキャリアだけです。フェルミ-ディラック分布によると、そのようなキャリアは僅かです。そこで、この電荷二重層の領域を、キャリアがほとんどいないという意味で空乏層と呼びます。
例えば、空乏層を作って、光を照射して、そこで電子にエネルギーを与えて、価電子帯から伝導帯へ上げることができます。
我々が考えているのは、pn接合です。つまり、電荷二重層を中心に電位の形がどうなっているのかを知りたいのです。
帯電すると、ポアソン方程式より、電位が曲がります(解が二次関数だったのを思い出してください)。この電位の変化を計算しましょう。n型半導体から、電子が逃げ出した範囲の厚さを\(d’\)として、p型半導体からホールが逃げ出した範囲の厚さを\(d\)とします。
この電荷の分布を模式的に書くと以下のようになります。
注意されたいのは、n型半導体とp型半導体はともに「もともと電気的に中性である」ということです。なので領域1と4では電荷は零になります。

上図では、x軸の原点がpn接合の接合面になっている。この接合近くのn型半導体のドナー原子の密度を\(N_D\)として、p型半導体のアクセプタ原子の密度を\(N_A\)とする。
電子やホールが移動すると、イオン化したドナーやアクセプタが残り、その部分は多数キャリアとは反対の符号に帯電する。まあ、向かいのホールに電子が移動して、ホールは電子が無くなるところにできたというイメージでも良いと思います。
このときの電荷密度はn型半導体では\(eN_D\)、p型半導体では\(-eN_A\)となる。よって上図のような階段状の電荷分布となる。
ここで注意されたいのは、少数キャリアは空乏層内に存在できるので、上のモデルは簡略化されたものだということです。
電荷分布が分かれば、ポアソン方程式より、電位がわかります。つまり、pn接合の電流-電圧特性をこれをもとに求めることができます。ポアソン方程式を解くのですが、まずは電位分布の結果からグラフで先にお見せします。

空乏層の電位は面白い形をしています。二次関数ぽく点線で書いている部分はポアソン方程式をといたときのイメージと被せているからです。ー電位軸はp型半導体の電位の位置を0と基準を置き、そこからn型半導体で電位がマイナスに位置するように横軸を置いた。
この領域2から領域3に行くまでの流れは上に凸と下に凸な2次関数で表現出来ました。
さて、簡易的なイメージはわかったので、本腰を入れて求めてみましょう。
電位を求めるポイントとしては、領域ごとに分けて計算することです。
ここでは1次元のx軸方向でけに着眼すればいいので使うポアソン方程式は以下になります。
$$(\frac{d^2 }{dx^2})\phi (x)=-\frac{\rho (x)}{\epsilon}・・・①$$
これは①式と同じです。
\(x≤-d , d’ < x\)の領域を考えましょう。これは領域1と領域4に該当します。そして、この部分は電気的に中性なので、電荷密度\(\rho = 0\)であるので、
$$(\frac{d^2 }{dx^2})\phi (x)=0$$
となります。
次に領域2では\(-d<x≤0\)であり、電荷密度\(\rho = -eN_A\)なので、
$$(\frac{d^2 }{dx^2})\phi (x)=\frac{eN_A}{\epsilon}・・・②$$
となります。
そして、領域3では\(0<x≤d\)であり、電荷密度\(\rho = eN_D\)なので、
$$(\frac{d^2 }{dx^2})\phi (x)=-\frac{eN_D}{\epsilon}・・・③$$
となります。
電位の求め方は先ほどと同様に以下のように解を設定して、それぞれの領域(i=1~4)の係数を求めましょう。
$$\phi_i (x)=a_ix^2+b_ix+c_i$$
まず、領域2と3は空乏層(電荷二重層)であり、グラフから傾きがあることがわかります。領域1,4には傾きがないので電位の一階微分はゼロになります。
$$\frac{d}{dx}\phi_i (x) = 2a_ix+b_i$$
となり、領域1と4では\(a_1=a_4=0\)となります。
ここから領域1と4の電位は\(\phi_{i} (x)=b_{i}x+c_{i}\)(i=1,4)と直線を表すことが分かります。
そして外からの電場がかかっていない場合を考えているので傾きはありません。つまり、\(b_i=0\)(i=1,4)となります。つまり、
$$ \phi_i (x) = c_i (i=1,4)$$
となります。領域1と4ではフラットな電位ということになります。
電位の基準(原点)はどこにとっても自由なので、グラフでは領域1を原点に取りました。そこで\(c_1=0\)とおくと、
\(x<-d\)では、
$$\phi_1 (x)=0$$
\(d'<x\)では、
$$\phi_4 (x)=c_4$$
となる。
領域2を見ます。-d<x≤0が領域になります。
電位を2階微分は、
$$\frac{d^2}{dx^2}\phi_2 (x) = 2a_2$$
となります。 これとポアソン方程式の②式を比較すると、
$$a_2=\frac{eN_A}{2\epsilon}$$
となる。
領域3も見ます。0<x≤d’が領域になります。
③式とポアソン方程式の比較より、
$$a_3=-\frac{eN_D}{2\epsilon}$$
となります。
領域2と領域3の境界線では傾きが等しくなります。つまり、境界線での電位と電場が一致するので、2式が釣り合うということです。
$$\frac{eN_A}{2\epsilon}x^2+b_2x+c_2=-\frac{eN_D}{2\epsilon}x^2+b_3x+c_3$$
$$\frac{eN_A}{\epsilon}x+b_2=-\frac{eN_D}{\epsilon}x+b_3$$
これにx=0を代入すれば、
$$c_2=c_3$$
$$b_2=b_3$$
となります。また、x=-dとx=d’のところでも電位と電場は一致するので、境界条件を書くと、
x=-d(境界線上)では、領域1と領域2の方程式は以下のようになります。
$$0=\frac{eN_A}{2\epsilon}d^2-b_2d+c_2$$
$$0=-\frac{eN_A}{\epsilon}d+b_2$$
これらの連立方程式から、b_2,c_2が求まります。
x=d'(境界線上)では、領域3と領域4の方程式は以下のようになります。
$$-\frac{eN_D}{2\epsilon}d’^2+b_3d’+c_3=c_4$$
$$-\frac{eN_D}{\epsilon}d’+b_3=0$$
これらの連立方程式から、\(b_3,c_4\)が求まります。
以上を整理すると、
領域1 : x≤-d
$$ \phi_1 (x)=0$$
領域2 : -d<x≤0
$$\phi_2 (x)=\frac{eN_A}{2\epsilon}(x+d)^2$$
領域3 : 0<x≤d’
$$\phi_3 (x)=-\frac{eN_D}{2\epsilon}((x-d’)^2-d’^2-\frac{N_A}{N_D}d^2)$$
領域4 : d'<x
$$V_D=\phi_4 (x)=\frac{e}{2\epsilon}(N_Dd’^2+N_Ad^2)$$
と表せる。
この領域4の\(\phi_4 (x)\)が外部から電圧をかけないときのpn接合の電位差\(V_D\)で、これを拡散電位とか内臓電位と呼びます。まあ、ただ接合しただけのときに出来る電位差です。
この式から、ドナーやアクセプタの密度\(N_D,N_A\)が大きいほど拡散電位が大きくなることが分かります。
これでpn接合の電位分布が求まりました。接合の両側の電荷二重層(空乏層)によって、電位が曲がりました。この電位の曲がりにより、伝導帯と価電子帯も曲がります。
これに外部から電圧をかけると、一方方向によく電流が流れ、反対方向にはほとんど電流が流れないという整流作用が作れます。
ステップ3に行く前に、外部から何も電圧をかけない平衡状態のpn接合のバンド構造を見てみましょう。

左側はp型半導体、右側がn型半導体です。真ん中は空乏層であり、電荷二重層なので電位が曲がっています。
この図が電子とホールの接合したときの全てを表しています。n型半導体の伝導帯の電子密度は以下の電子密度のスミ網部分に対応しています(第2講で説明した図になります)。

話を最初のpn接合の図に戻します。
平衡状態ではn型半導体の伝導帯の電子のうち、拡散電位よりも高いエネルギーを持っている電子(電子密度 : \(n_n\))のみが、p型半導体に移動できます。このとき電子は運動エネルギー(拡散エネルギー以上)を持っているが、伝導帯のp型半導体の底に移動したら、もう運動エネルギーを持っていません(静止する)。
つまり、空乏層では右方向に電場がかかっているが(図ではそりたつ壁のような坂になっている)、p型半導体の位置まで移動できることになります(拡散電位以上のエネルギーがある場合)。一方、拡散電位以下のエネルギーだと、電子はn型半導体からp型半導体へ移動できません(拡散電位の電場によって押し戻されます)。
一方で、p型半導体の電子(電子密度\(n_p\))に注目すると、こちらは伝導帯の底ではあるが、n型半導体へ移動できるエネルギーを既に持っています。したがって、両方に移動できるエネルギーを持っている電子の数はほぼ釣り合っており、平衡状態では、
$$n_p≈n_n・・・④$$
の関係が成立します。
完全なイコールではない理由は、\(n_n\)の方が僅かに大きいからです。
整理すると、n側からp側への電子の小さな拡散電流とp側からn側への電子の僅かなドリフト電流が釣り合っています。途中計算は割愛しますが、この条件からp側とn側の擬フェルミエネルギーが一致すること
$$E’_{Fp}=E’_{Fn}$$
を示すことができます。これがpn接合の平衡状態です。そして、伝導帯の電子の話は、価電子帯のホールも同様に成立します。
では、pn接合の平衡状態がわかったので、外部電圧をかけたときのステップ3のお話をしましょう。
外部からバイアス電圧をかけたとき、どのように拡散電流が流れるか見ます。
バイアス電圧とは一定の大きさの定常的な電圧(つまり直流電圧)をかけることを意味する。
この外部電圧をかけて、電場を作って、電場が出来れば拡散電流が流れるので、それを見ていく過程になります。
拡散電流を求めるために電子に注目します(電子が理解できればホールも理解したも同様です)。
まず、p型半導体とn型半導体の電位差(先ほどの拡散電位)が小さくなるように外部からバイアス電圧を加えます(これを順方向バイアスと呼びます)。バイアス電圧はpn接合の両端にかけます。これにより電流が流れやすくなります。下図の左側です。一方でその逆方向にバイアス電圧をかけると電流が流れにくくなります(これを逆方向バイアスと言います)。下図の右側です。

順方向バイアスをかけたときのバイアス構造を以下に図示する。

順方向にバイアス電圧をかけると左側のp型半導体の電位に比べて、右側のn型半導体の電位は相対的に持ち上がり、キャリア密度の平衡状態が崩れて、拡散電流が流れます。p型とn型の電位差が拡散電位\(V_D\)より小さくなり、その分移動できるキャリア密度が増えたので電流が流れやすくなったということです。これは電子の密度がn型伝導帯にたくさんあるのでp型へと拡散し、拡散電流が流れるという仕組みです。一方p型半導体の伝導帯には少数キャリアである電子が注入されます。同様にn型では少数キャリアであるホールが注入されます。これらを少数キャリアの注入と呼びます。
さて、このときのpn接合の拡散電流を求めてみます。
これから考えるモデルは現実よりかなり簡単化されたものですが、初心者の理解の促進としては十分なモデルです。
このモデルの特徴は「空乏層内では電子とホールが空間的に混ざり合っているので、実際はキャリアの再結合(ホールと電子が結合して光を放出する)が起きる」のですが、計算を簡単にするため、「空乏層では再結合は起こらない」と仮定します。
つまり、伝導帯の電子はn型半導体からp型半導体へ拡散し、空乏層を抜けた後に再結合が始まると仮定するということです。また、価電子帯のホールでも同様に仮定します。
ちなみに、多くの教科書では空乏層が薄い場合は再結合を無視しても許されるとことわっているそうです。
順方向バイアス電圧\(V_B\)をかけると、伝導帯では④式の右辺が大きくなり(\(n_p<<n_n\))、p型半導体に電子が拡散して拡散電流が流れます。空乏層では再結合が起こらないので、電子密度\(n_n\)が空乏層の左側にもそのまま存在すると考えます。空乏層の境界を先ほどと同様にx=-dとd’と置くと、x=-d以下のp型半導体で再結合が行われてx=-∞に到達するころには\(n_p\)に等しくなるという現象が起こっていることになる。
この現象の拡散電流を求めるためには、まず\(n_n\)を求める必要がある。上図のn型半導体の状態密度にフェルミ-ディラック分布をかけて積分をすればいいのです。積分範囲はp型半導体の伝導帯の底\(E_{Cp}\)より高いエネルギーを持った電子になります。ちょうど青で塗られた部分です。
順方向バイアス電圧をかけると、\(E_{Cp}\)と\(E_{Cn}\)の電位差はもとの拡散電位\(V_D\)よりバイアス電圧\(V_B\)ずれた分減少するので、バイアス電圧をかけたときの伝導帯のp型半導体の底とn型半導体の底のエネルギー差は
$$E_{Cp}-E_{Cn}=eV_{D}-eV_{B}$$
となり、整理すると、
$$E_{Cp}=E_{Cn}+eV_{D}-eV_{B}$$
なります。積分範囲は\(E_{Cp}\)から∞なので、
$$n_n=\int_{E_{Cn}+eV_{D}-eV_{B}}^∞ \frac{1}{1+e^{\frac{E-E’_{Fn}}{k_BT}}}D_e(E)dE$$
$$≈\frac{8\sqrt{2}π}{h^3}(m_e^*)^{\frac{3}{2}}e^{\frac{E’_{Fn}}{k_BT}}\int_{E_{Cn}+eV_{D}-eV_{B}}^∞\sqrt{E-E_{Cn}}e^
{-\frac{E}{k_BT}}dE$$
$$=\frac{8\sqrt{2}π}{h^3}(m_e^*)^{\frac{3}{2}}e^{\frac{E’_{Fn}}{k_BT}}\int_{E_{Cp}}^∞\sqrt{E-E_{Cn}}e^
{-\frac{E}{k_BT}}dE$$
二行目の近似はフェルミ-ディラック分布をマクスウェル-ボルツマン分布に置き換える近似を使っています。これは第2講でも取り扱いました(室温だったときのエネルギーのお話を思い出してください)。
上式では積分をするのが非常に難しいです。なので近似を使います。n型半導体の電子の状態密度ではなく、p型半導体の電子の状態密度を使います。この式では、\(E_{Cn}\)と\(E_{Cp}\)を置き換えることを意味しており、伝導帯のn型半導体とp型半導体の底のエネルギー差が大きく違うと近似の精度は悪くなります。なので、順方向バイアス電圧を大きくするにつれて、n型半導体の伝度帯の底\(E_{Cn}\)は持ち上げり、p型半導体の伝導帯の底\(E_{Cp}\)に近づき、順方向バイアスでは近似の精度はよくなるのです。故に、近似を行うと、
$$n_n=\frac{8\sqrt{2}π}{h^3}(m_e^*)^{\frac{3}{2}}e^{\frac{E’_{Fn}}{k_BT}}\int_{E_{Cp}}^∞\sqrt{E-E_{Cn}}e^
{-\frac{E}{k_BT}}dE$$
$$=\frac{8\sqrt{2}π}{h^3}(m_e^*)^{\frac{3}{2}}e^{\frac{E’_{Fn}}{k_BT}}\int_{E_{Cp}}^∞\sqrt{E-E_{Cp}}e^
{-\frac{E}{k_BT}}dE$$
$$=N_ce^{-\frac{E_{Cp}-E’_{Fp}}{k_BT}}$$
となる。途中で\(\int_0^∞\sqrt{x}e^{-x}dx=\frac{\sqrt{π}}{2}\)を使った。
一方でp型半導体の電子密度は第2講で導出したものでは、
$$n_p=N_ce^{-\frac{E_{Cp}-E’_{Fp}}{k_BT}}$$
なので、先ほど導出した\(n_n\)と比べると、
$$n_n=N_ce^{-\frac{E_{Cp}-E’_{Fp}}{k_BT}}=N_ce^{-\frac{E_{Cp}-E’_{Fp}-E’_{Fn}+E’_{Fn}}{k_BT}}$$
$$=n_pe^{-\frac{E’_{Fp}-E’_{Fn}}{k_BT}}=n_pe^{\frac{eV_B}{k_BT}}$$
の関係があることがわかり、順方向にバイアス電圧\(V_B\)を掛けると\(e^{\frac{eV_B}{k_BT}}\)倍だけ電子密度がp側より大きくなるということがわかります。
ホールも同様の結果が得られます。
$$p_p=p_ne^{\frac{eV_B}{k_BT}}$$
電子とホールの状態密度を見てわかる通り、\(V_B\)がゼロのとき、つまりバイアスがかかっていないとき、n型とp型で状態密度はほとんど等しくなる。一方、順方向バイアス\(V_B\)がかかるとき、指数の肩は1以上になり、状態密度に偏りがうまれ、その偏りは他方へ拡散し拡散電流が流れます。
軽く定量的に見ると、室温300Kでは\(k_BT=25.9\)meVです。一方で順方向の通常のバイアス電圧はボルトオーダーなので\(eV_B\)もエレクトロンボルトのオーダーなので、\(V_B=1000\)mV(1V)かけたとすると\(\frac{eV_B}{k_BT}\)は40くらいになり、\(\frac{eV_B}{k_BT}≈e^40\)とかなり大きな数字になります。室温で1Vの順方向バイアスを掛けただけで、これだけ大きな拡散電流が流れることが分かります。
ホールの話をしましょう。
空乏層を抜けたところで再結合すると仮定しました。ここでのホールの拡散と再結合は電流連続の式で表すことができます。具体的には第3講で紹介した⑤式(以下の式)を使います。
$$\frac{\partial n}{\partial t} =D\frac{\partial^2 n}{\partial x^2}-\frac{\Delta n}{\tau}$$
この式は電子の電流連続の式ですが、電子密度nをホール密度pに置き換えれば、ホールの電流連続の式になります。
$$\frac{\partial p}{\partial t} =D_p\frac{\partial^2 p}{\partial x^2}-\frac{\Delta p}{\tau_p}$$
ここでの\(\tau_p\)はホールの寿命です。\(D_p\)は拡散定数です。拡散電流が定常的に流れている場合を考えると、ホール密度は時間的に変動しないので左辺はゼロになる。\(\Delta p\)は平衡状態のホール密度からのずれなので、\(\Delta p=p-p_n\)になります。よって、上式は
$$\frac{\partial^2 p}{\partial x^2}-\frac{\Delta p}{D_p\tau_p}=0$$
となる。この方程式は境界条件を作ると解けます。
具体的には、
\(x=d’\)で\(p=p_ne^{\frac{eV_B}{k_BT}}\)
\(x=∞\)で\(p=p_n\)
の境界条件で解きます。 上の1式目はn型半導体の空乏層の境界でのホール密度になります。2式目はn型半導体のもっとも接合部分から遠いところのホール密度になります。
これらの境界条件より、解は以下のように求まります。計算は面倒なので省略した。
$$p-p_n=p_ne^{-\frac{x-d’}{\sqrt{D_p\tau_p}}}(e^{\frac{eV_B}{k_BT}}-1)$$
となります。不安な方は、先ほど求めたホールの電流連続の式に代入してみて確かめてみてください。
この解を使えば、\(x=d’\)におけるホールの拡散電流\(I_p\)が求まります。これは第3講で求めた拡散電流密度を表す式に代入すれば求まります。pn接合の断面積を\(S\)とし、\((D_p\tau_p)^{\frac{1}{2}}≡L_p\)と定義して計算をすると、
$$I_p=JS=-eD_p\frac{\partial p}{\partial x}|_{x=d’}S=ep_nS\frac{D_p}{L_p}(e^{\frac{eV_B}{k_BT}}-1)$$
となります。\(\frac{\partial p}{\partial x}|_{x=d’}\)は\(x=d’\)の位置で微分をしたということを意味する。
同様に\(x=-d\)でn型半導体からp型半導体に注入された電子の拡散電流\(I_n\)についても同じように考えることができる。
$$I_n=eD_e\frac{\partial n}{\partial x}|_{x=-d}S=en_pS\frac{D_n}{L_n}(e^{\frac{eV_B}{k_BT}}-1)$$
となります。
したがって、順方向のバイアス電圧\(V_B\)によって生じるpn接合の全体の拡散電流\(I_D\)の大きさを表す目安として、このホールの拡散電流\(I_p\)と電子の拡散電流\(I_n\)の和を取る。
$$I_D=I_p+I_n=I_S(e^{\frac{eV_B}{k_BT}}-1)・・・⑤$$
$$I_S≡eS(\frac{D_p}{L_p}p_n+\frac{D_n}{L_n}n_p)$$
となる。
さて、この拡散電流\(I_D\)とバイアス電圧\(V_B\)の関係を示す。⑤式をグラフ化したものになります。

グラフでは外部電圧\(V_B\)を大きくすると、指数の肩が大きくなり指数関数的増加が見える。また、負の電圧(逆バイアス)を大きく掛けると、指数の部分は0に収束し、全体としては飽和電流へと収斂していく。
この式は順方向の拡散電流(外部電源でpn接合に順方向バイアスをかけたとき)について求めたものであるが、逆方向のドリフト電流(外部電源でpn接合に逆方向バイアスをかけたとき)にもこの式は成立します。
では、逆方向にバイアスを掛けた場合のバンド構造も見ておきましょう。ちなみに、結果は既に上図からわかる通り、電流が流れにくくなります。これは以下のようなバンド構造になっているからです。

このときp型半導体の少数キャリアである電子がn側へ流れ、n側の少数キャリアであるホールがp側へ流れます。逆バイアスを大きくしたところで上流にある\(n_p,p_n\)の大きさは変わらないので電流は大きくなりません。つまり、どれだけ急な坂にしても、上流にあるキャリアが少ないのでそれほど電流が流れないというわけである。
以上をまとめると、順方向にはよく電流が流れるが、逆方向にはほとんど電流が流れない整流作用が現れます。
そして⑤式を理想ダイオードの式と言う。丸暗記したくなるくらい重要な式です。ちなみに私は物理学科でしたので学生実験で登場しました。
ダイオードはdiodeと書きます。「diは2つ」、「odeは道」というギリシャ語由来です。つまり、整流作用を持つデバイスのことを表します。
注意として述べておくと、理想ダイオードの式は現実のシリコンのダイオードのIVカーブをそれほど正確には再現できておらず、モデルが簡単で整流作用が表現できるのが利点です。
pn接合を理解したので、ショットキー接合も理解しましょう。pn接合は半導体同士の接合により、整流作用を作りました。ショットキー接合とは半導体と金属(導体)の接合により、整流作用を作ります。
ここではその作り方を簡単に見ておきましょう。
まず、金属を高温に溶かします。そして、金属の原子が蒸発して気体になり、周りを飛び始めます。その近くに半導体を置いておくと、半導体の表面に金属の原子が付着して膜を作ります。これを蒸着と呼びます。
ただし、実際は空気があり、様々なゴミが混ざっています。さらに、金属を蒸発させて半導体に付着させるまでに空気があり、その空気分子が邪魔で半導体まで到達できません。
これを解決するために、真空の中で金属を半導体へ飛ばす必要があります。真空中だと邪魔な空気は存在しません(よく通販で布団の空気を抜いたり、スーパーで真空パック詰めにされたベーコンなどがあります)。もちろん、完全な真空などはありませんが、真空度は原理的に高いほどよいです。ただ、高い真空に達するには長い排気時間や高価な真空装置を要します。つまり、生産性の観点から適当な真空度が選ばれます。
以上がざっくりとしたショットキー接合の作り方のお話でした。
ショットキー接合の電位の空間的な分布を見ましょう。
金属と半導体では、フェルミエネルギーの位置が異なります。金属のフェルミエネルギーは禁止帯より上の伝導帯の中にあります。フェルミエネルギーは電子の存在確率が1/2となるエネルギーの位置です。それが伝導帯の中にあるということは自由電子が沢山あるということです。つまり、金属の中では室温でも低温でも半導体に比べて伝導電子(自由電子)が大量に存在します。
n型半導体と金属のショットキー接合を考えます。両者を接触させると半導体の伝導帯の底の方が金属のフェルミエネルギーより高いので接合近くの半導体の電子が金属に流れ込みます。このためイオン化したドナーによって接合近くの半導体の電位は曲がります(以下の図参照)。曲がり方は接合近くの幅\(d\)の半導体が一様にプラスに帯電していると近似すると、pn接合のときと同様にしてポアソン方程式を解くと、二次関数の下に凸な形になります。なので、下の図でもそれを表現しています。もちろん\(d≤x\)の範囲では電気的に中性なので電荷分布は帯電しておらず、ポアソン方程式(電荷がある)もラプラス方程式(電荷がない)となり、これを解くと電位は一定値になります。一方で金属には極めて多数の電子があるので、接合近くの半導体の比較的少数の電子が流れ込んでも電位は曲がりません。

さて、次にこの接合に外部から電圧をかけるとどのように電位が変わるか見てみましょう。

ショットキー接合はpn接合と同様に整流作用があります。ショットキー接合の特徴は金属と半導体の接合近くにポテンシャル障壁(ポテンシャルバリア)が出来ることにあります。
半導体に電圧をかけて電位を底上げするとポテンシャルの壁を越えられる電子が増えます。これは上図のそり立つ壁(ポテンシャル障壁)のような急な勾配がなだらかになり、電子が金属の方へ移動しやすくなるからです。つまり、半導体から金属へ電子が流れます(順方向)。ポテンシャル障壁を超える電子は伝導帯の底から離れた大きなエネルギーを持っています。これを熱電子(hot electron)と呼びます。このため、この熱電子の金属への移動を熱電子放出と呼びます。この熱電子は金属内でも伝導帯の底より高いエネルギー(運動エネルギー)を持っています。このポテンシャル障壁を超えられる電子の数はpn接合と同様にフェルミ-ディラック分布に従います。理想的なIVカーブは以下の図の相似形になります。
また、逆方向に外部電圧をかけたときは金属から半導体へ流れる電子の数はポテンシャル障壁に阻まれて電子はほとんど流れず、電流は流れません。
以上から、ショットキー接合の整流作用が理解出来ました。

最後にショットキー接合とpn接合の大きな違いについて理解します。pn接合の場合は順方向バイアスをかけたとき、n型半導体の電子がp型半導体に流れます。そしてこのとき、p型半導体にとって電子は少数キャリアでした。ところがショットキー接合では金属にとって電子は多数キャリアであるという違いがあります。
このショットキー接合はpn接合より高い周波数まで応答するという特徴があります。
オーミック(オーム性)とはオームの法則で書けるような電極のことを言います。整流作用では逆バイアスを掛けるとオームの法則が見えなくなります。また順方向バイアスをかけると指数関数的に増加します。以下の図参照。

半導体デバイスの中でショットキー接合を用いるとき、整流作用を持つ特性がいつでも欲しいというわけではありません。それはショットキー接合を半導体に電流を流し込むためにただの電極として使いたい場合もあるからです。たとえば、p型やn型半導体を使って、ダイオード(pn)やトランジスタ(npnやpnp)を作ったとしましょう。そのn型やp型の部分に外から電気を流し込むためには電極が必要です。
このとき電極に求められる特性はオームの法則(V=IR)で書けるという接合です。変に整流作用が働いたり、非線形のI-V特性が出るのは望ましくありません。
このオーミックな接触を作るためには、ショットキー接合ではポテンシャル障壁が邪魔です。そこで、この壁を低くするか、薄くなるような接合を作る必要があります。低ければ簡単に電子が乗り越えられるし、薄い場合はトンネル効果という量子力学的効果によって多数の電子が壁を通り抜けることができます。
オーミック接触を作るにはノウハウが入ります。
ここで言いたかったことは、ショットキー接合をただ整流作用として使うだけでなく、オーミック接触を備えた電極として使う場合もあるということです。
パソコンを使っていると熱が発生します。これはCPUと呼ばれる部品に熱が溜まるからです。このCPUとは人間の体に例えると脳の役割を持った非常に重要な部分です。複雑な計算を行っている部分だと思ってください。そしてこのCPUを冷やすために大抵のパソコンにはファンがついてます。たまに、水冷や液体窒素を使う人も稀にいます。CPUは冷やさないと手で触れられないくらい高い温度に上昇します。私のノートパソコンでも90℃くらい軽く到達したことがあります。
ここでは、どうして熱が発生するとまずいのかをバンド構造の観点から理解しましょう。
伝導帯の電子密度や価電子帯のホール密度は温度によって変わります。温度を上げれば、伝導帯に存在する自由電子は増え、価電子帯のホールの数も増えます。もちろん、絶対零度では伝導帯に自由電子(ホール)なんてありません。全ての物質は静止します。
つまり、温度が上がるとキャリア数は増えます。想定より大きな電流が流れます。そして、大きな電流が流れると、その流れた電流自身が持つジュール熱により熱の発生が増える悪循環が出来上がります。これがエスカレートするとデバイスが劣化して壊れます。それ以前にパソコンのCPUはもともな論理演算ができなくなり、出鱈目な計算を始めます。これを熱暴走と言います。
なので、パソコンや家電製品などで使われる半導体デバイスは温度管理が重要ということです。
参考文献

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