半導体内の電流

目次
  • 電流には2種類ある
  • ドリフト電流
  • 拡散電流
  • 拡散電流の式の導出
  • 電流連続の式
  • ホール効果
  • 参考文献

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電流には2種類ある

 電流にはドリフト電流拡散電流があります。

 これまでは伝導帯と価電子帯のキャリアの数について理解を深めてきました。次は半導体内で電流を流すことを考えて見ましょう。そこで理解することはキャリアを動かすことです。

 冒頭で述べたドリフト電流とは電場(電界)をかけたときに流れる電流です。金属の電線に電池を繋ぐと、電流が流れます。これがドリフト電流です。あとから具体的に見ていきます。英語のdriftには、風などが吹き流すという意味があります。この場合では電場が風の役割を担っています。もっとわかりやすく言えば、オームの法則が表す電流のことです。これが次のセクションの具体例なので、中学校の復習にもなります。

 もう1つ冒頭で述べた拡散電流とは、キャリア密度の高いところからキャリア密度の低いところへ流れる電流のことを言います。これは電場とは関係のない電流です。

 後から説明しますが、前者が電場の絡んだ電流、後者が電場の絡まない電流と軽く頭に入れて置いてください。

  ちなみに、電場とは電荷に作用する場のことを言います。電荷は電場の影響を受けてクーロン力を作ります。静電気もその1つです。

余談ですが、物理系の人間は電場という言葉に馴染みを持っていますが、工学系の人間は電界という言葉に馴染みを持っているらしいです。自分は前者の方が馴染みがあるので、そちらを使わせて頂きますね

ドリフト電流

 オームの法則では、抵抗Rと電流Iと電圧Vの関係を

$$V=RI$$

と表すことが出来ます。具体的には、電池に電気抵抗を繋いだ回路を考えて見ましょう。

オームの法則 : V=RI

この法則は我々が普段使う電線などでも普通に成り立ちます。上図だとざっくりとした説明ですが、ミクロに見ると、この法則をより深く理解できます。

 まずは電池の陽極と陰極を1本の銅線で繋いだ場合を考える(上図から抵抗を除いた場合)。銅線の中には電場\(E\)が生じます。この電場が存在するとき、電荷\(q\)を持つ電子には\(F=qE\)の力が働きます。一定の力が働けば、それが徐々に電子が加速されます。入り口である陰極側と出口である陽極側で速度は違うように見えますが、実は同じなのです。その理由は電子の散乱です。電子は銅線の中で何かに衝突し、進行方向が変わり、速度が落ちたり、跳ね返ったりしながら、進行します。一番多い衝突は銅原子との衝突です。この衝突が起こると、電子は運動エネルギーを失います。その失われたエネルギーは原子の振動に変わります。原子の振動とは我々がと呼んでいるものです。なので金属に電流を流すと発熱が生じますが、それはこのように電子の運動エネルギーが熱に変換されているからです。つまり、電子は終始原子と衝突しながら前に進んでいきます。その速度は平均的と言えます。そういえば、普段使っているドライヤーの熱もこれで説明が出来ます。ニクロム線が赤熱して熱を出し、ファンで温かい風を送風します。

 この散乱とオームの法則の関係を見ることで、抵抗の中でどのように電子が振舞っているかがわかります。まず、平均的に進むということを考えると、電子の散乱と散乱の間の平均時間を\(T\)とする。この時間\(T\)の間に、電子は電場によって\(F=qE\)の力を受けるので、力学的には\(F=ma\)と物質の運動を表現できます。このとき\(m\)は質量、\(a\)は加速度です。これを使えば、加速度は\(a=\frac{qE}{m}\)と表せます。したがって\(T\)秒後の速度は\(\frac{qET}{m}\)になる。

 電子の散乱のされ方の種類は色々あります。ここでは入門編なので、問題を簡単に考えて見ましょう。つまり、電子が原子と衝突すると、電子が停止する(全ての運動エネルギーが失われる)。そして電場によって電子が加速され、また原子と衝突すると停止する。この繰り返しで電子が進んでいくとする。ということで、原子と衝突して停止したところから、もう一度原子と衝突するまでの過程を考えます。これは電子が等加速度的に移動している状態です。この間の移動距離\(l\)は

$$l=\frac{1}{2}aT^2=\frac{qET^2}{2m}$$

と表現できます。このときの平均の速さ\(v\)は距離\(l\)を時間\(T\)で割ればいいので、

$$v=\frac{qET}{2m}=\frac{\frac{qT}{2}}{m}E$$

$$=\mu _eE・・・①$$

この式からわかることは、電子の速度は電場\(E\)に比例し、この比例定数\(\mu _e\)を電子移動度と呼ぶ。

$$\mu _e≡\frac{\frac{qT}{2}}{m}=\frac{q\tau}{m}$$

ここで、電子緩和時間\(\tau\)を\(\tau≡\frac{T}{2}\)で定義した。

 電子移動度は電場をかけたときに、どれくらいのスピードが出るかを表します。なので、半導体の性能を決める重要な物理量です。電子移動度が大きければ、小さな電場でも早いスピードを出すことが出来ます。

 (一応、復習ですが、電流の大きさを決めるのは“キャリアの数”“キャリアの速さ”です。今の場合は後者の話をしています。)

 電子の密度を\(n\)とすると、電流密度(単位断面積あたりの電流)\(J\)は、電荷×電流密度×速度です。

電流I=電流密度J×断面積Sのイメージ

断面積とは名前の通りです(例えば、大根を切ったときの断面の面積が断面積です)。電流密度は

$$J=qnv=qn\mu_eE・・・②$$

と表せます。長さ\(L\)の銅線(または半導体)の電位差が\(V\)であったとすると、電場の大きさは\(E=\frac{V}{L}\)と表すことができる。よって電流は、②式と合わせて、

$$I=\frac{qn\mu_eVS}{L}$$

となる。これを\(V\)について解くと、

$$V=\frac{L}{qn\mu_eVS}×I・・・③$$

となる。故に、

$$R≡\frac{L}{qn\mu_eVS}$$

と置けば、オームの法則\(V=RI\)が成り立つ。

 これが具体的な抵抗の中身になります。この数式から抵抗\(R\)について理解することが出来ます。例えば、どうすれば抵抗\(R\)を小さくすることができるのか。③式の分母を見ると、電子の密度\(n\)が大きくなるほど、あるいは移動度\(\mu_e\)が大きいほど、抵抗\(R\)は小さくできます。これは電子の数が多いほど抵抗値は小さくなることを意味しています。これは電子の数が多いほど大きな電流が流れ、抵抗が小さくなります。また、移動度が大きいと電子の速さは大きいので抵抗が小さくなります。

(※電流の大きさを決めるのは”キャリアの数”と”キャリアの速さ”)

 ③式の分子を見ると、銅線の長さ\(L\)が長くなるほど、あるいは断面積が\(S\)が小さくなるほど、抵抗が大きくなります。

拡散電流

 半導体の中のもう1つの電流は拡散電流です。半導体の固まり(バルク)があったとして、その片隅に伝導電子(自由電子)の集団が固まって存在しているとすると、絶対零度でない場合(例えば室温とかの場合)には、自由電子は運動エネルギーを持っていて様々な方向に動き回ることができます。半導体には電場がかかっていないので、自由電子はこのバルク内に広がります。この拡散して(広がって)いくときの電子の移動による電流を拡散電流と呼びます。

拡散電流のイメージ

 上図を見てわかる通り、拡散電流の向きは電子密度の高いところ(バルクの左側)から低いところ(バルクの右側)へ流れます。

 拡散電流は気体分子の拡散と同じ現象です。電子は電荷を持ち、電子同士はその電荷によるクーロン力で反発します。しかし、これが拡散の直接的な原因というわけではありません。つまり、電場によって電流が生じているというわけではありません。この点がドリフト電流との違いです。

 この拡散電流を式で表します。

$$J=eD\frac{dn(x)}{dx}・・・④$$

この式の導出は後から行います。まずは④式について軽く説明します。\(n(x)\)は位置\(x\)でのキャリア密度です。\(e\)は電気素量です。\(D\)は拡散係数と呼ばれる量です。この式は、密度の傾き\(\frac{dn(x)}{dx}\)が大きいときには電流密度\(J\)は大きくなる。傾きが小さければ電流も小さくなる。傾きがゼロの場合は、バルク内の密度は一定なので電流は流れず、拡散はゼロです。つまり、バルク内の電子の固まりに偏りがあると、電子は拡散し、密度の傾きがあります。バルク内に電子が均一に存在していると、拡散は生じず、密度の傾きはゼロになります。

拡散電流の式の導出

 拡散電流の式の導出を行う。

 話をシンプルにするために1次元空間で考えてみる。

 バルクの左隅を位置を\(x_1\)、その右隣りを\(x_2\)、そのような感じで位置\(x_i\)を設定します。当然、\(x_i\)の右隣りは\(x_i+1\)になります。

 ここで、左隅に行くにつれて電子密度\(n(x)\)(電子の数)が偏っているという設定にします。そうすると、電子密度\(n(x)\)と位置\(x_i\)の関係をグラフにしてイメージすると以下のようになります。

電子密度とバルク内の位置の関係

 1次元なので、電子が次に動く位置は右か左か、この二択しかありません。なので確率的には右か左かは\(\frac{1}{2}\)で表現されます。位置\(x_i\)にある電子密度\(n(x_i)\)(電子の数)は、平均衝突時間を\(t\)として、この間の移動距離を\(l(=|x_i-x_{i+1}|)\)とすると(\(i\)は自然数)、電子密度の半分\(\frac{1}{2}n(x_i)\)は右側へ移動し、もう半分の電子密度\(\frac{1}{2}n(x_i)\)は左側へ移動します。

 今、\(x_i\)から\(x_{i+1}\)へ移動する電子と、\(x_{i+1}\)から\(x_i\)移動する電子について考える。\(x_i\)と\(x_{i+1}\)の距離は\(l\)です。この距離\(l\)の間にある断面について考える(下図の斜線部分)。この断面を通過する電子を考える。

\(x_i\)と\(x_{i+1}\)で生じる電子の移動

 上の図は3次元ぽく見えるがあくまで1次元です(絵心の問題です)。数的に考えれば、この斜線を通過できる電子密度(電子の数)は、

$$\frac{1}{2}n(x_i)-\frac{1}{2}n(x_{i+1})$$

になります。-で表現しているのは\(\frac{1}{2}n(x_{i+1})\)個の電子は右から来た\(\frac{1}{2}n(x_{i+1})\)個の電子と衝突して通過できないので(※\(n(x_i)>n(x_{i+1})\)、その差を\(\frac{1}{2}n(x_i)\)から引きました。

 これを電流密度\(J\)に書き換える。

電流密度\(J\)=電荷\(-e\)×電子密度\((\frac{1}{2}n(x_i)-\frac{1}{2}n(x_{i+1}) )\)×速度\(\frac{l}{t}\)

なので、この数式を少しだけ変形をすると、

$$J=e(\frac{n(x_{i+1})-n(x_i)}{l})\frac{l^2}{2t}$$

となります。\(x_{i+1}=x_i+l\)を用いて、括弧の中を考える。このとき、距離\(l→0\)になるように極限を取る(1階微分)。

 導関数の定義を思い出して欲しい。

$$ f'(x)=\frac{df(x)}{dx}=\lim_{h \to 0} \frac{f(x+h)-f(x)}{h}$$

 つまり、今まで考えていた距離\(l\)を微小距離\(l→0\)(限りなくゼロに近づけた場合)で考えた際の数学的処理だと思って欲しい。

 すると、以下のように近似できる。

$$ \frac{n(x_i+l)-n(x_i)}{l}≈\frac{dn(x)}{dx}$$

これを使えば、拡散電流は、

$$J=e\frac{dn(x)}{dx}\frac{l^2}{2t}$$

となる。さらに拡散定数\(D≡\frac{l^2}{2t}\)と定義すると、

$$J=eD\frac{dn(x)}{dx}$$

と書くことが出来る。これで④式(拡散電流の式)を導出できた。重要なのは、電子密度の傾き\(\frac{dn(x)}{dx}\)が大きくなるほど、拡散電流は大きくなり、傾きがゼロだと拡散電流は流れない。

 電子密度(電子の数)がホール内で偏っていると拡散電流が流れるということである。

電流連続の式

 電流連続の式とは、半導体のある区間を考えてください。そこは電子が出たり入ったりする区間です。その電子を数えるのが電流連続の式だと思ってください。例えば、交差点の真ん中を考えてください。車は出たり入ったりしながらその空間を通り過ぎます。その車の数を数えるイメージです。

 電流連続の式は、ドリフト電流や拡散電流を扱っていく上で数式的に表現するのに重要な式です。なので概念をきちんと理解しましょう。

 電子の場合を考えます。断面積\(S\)の細長い半導体を流れる電流を考えます。位置\(x\)から\(x+dx\)の間の領域について考える。以下のように電流が左から右に流れているとして、その区間では、光照射が行われれば電子が生成することもある(同時にホールも生成)。あるいは光を放出して電子が消滅することもある(電子とホールが再結合したともいえる)。なんにせよ、電子がただ一方へ流れるほかに生成消滅が行われる空間だと思って欲しい。

 後から、pn接合の拡散電流についての計算を取り上げるので、取りあえず、再結合の場合だけ考えて話を進める。

キャリアの流れ

厚さ\(dx\)の空間に流れ込む電子数、ここから流れ出る電子数、、割合\(R_n\)の再結合で消えていく電子数(光を放出して伝導帯の自由電子が価電子帯へとエネルギーが下がる)の和を考える。

 Rは英語のrecombination(再結合)から取っている。

電流の面密度\(J_n\)(断面積Sあたりに流れる電子)で表すと、流れ込む電流は\(J_n(x)S\)、流れ出る電流は\(J_n(x+dx)S\)と表すことができる。これを電子の電荷\(-e\)で割ると電子数が求まる。幅\(dx\)の部分での電子密度\(n(x,t)\)の時間変化を考える(2つ以上の変数を微分するときは、\(\frac{\partial n(x,t)}{\partial t}\)という形で書く。これは時間微分だけど、空間微分も同様)

$$\frac{\partial n}{\partial t} Sdx=(\frac{J_n(x)S}{-e}-\frac{J_n(x+dx)S}{-e})-R_nSdx$$

と書ける。

 電子密度の変数を位置\(x\)と時間\(t\)の2つを使っていることに注意されたい。電流連続の式ではこの時間的変化が考慮されている。

 ここで1次のテイラー展開使うと以下のように近似できる。

$$J_n(x+dx)≈J_n(x)+\frac{\partial J_n}{\partial x}dx$$

※ここでは電流密度も2つの変数\(x,t\)を扱っていることがこの式からわかる。

 これを使い、両辺\(Sdx\)で割ると、先ほどの幅\(dx\)での電子密度の時間変化は以下のようになる。

$$\frac{\partial n}{\partial t} =\frac{1}{e}\frac{\partial J_n}{\partial x}-R_n$$

 ホールも同様の式になる。これが再結合の項を含んだ電流連続の式です。

 この電流にはドリフト電流と拡散電流が該当します。

 後からpn接合のところで役立つ拡散電流の場合に絞って話を進めます。

 また、再結合の項はキャリア寿命\(\tau\)を使って表すことができます。キャリア数が平衡状態(伝導帯に自由電子がなく、価電子帯にホールがなく、安定した状態)より\(\Delta n\)多い場合は(この数だけ再結合できる)、キャリア寿命の逆数の割合\(\frac{1}{\tau}\)で再結合して消えていく性質がある(寿命の逆数はキャリアが崩壊していく割合とも解釈できます。この場合は再結合が崩壊に該当します。例えば、100時間使うと爆発するオモチャがあったとして、それを80時間使いました。このオモチャが爆発する割合は\(\frac{80}{100}\)です。これに100をかければ、%で表現できます)。これより、再結合で消えていく電子数の割合は\(R_n=\frac{\Delta n}{\tau}\)となります。この場合の電流連続の式は、拡散電流の④式を代入して以下のように表せます。

$$\frac{\partial n}{\partial t} =D\frac{\partial^2 n}{\partial x^2}-\frac{\Delta n}{\tau}・・・⑤$$

 この式は後で使いますので、頭の片隅に入れておいてください。

ホール効果

 ホール効果のホールは正孔のことではなく、アメリカのホールという人物から来ています。つまり、この人が発見したからホール効果という名前が付きました。

 結論から言うと、ホール効果は溜まった電荷によって電場が作られる現象のことを言う。これを今から見ていく。

 これまで、電場の影響によるドリフト電流キャリア密度の拡散による拡散電流を理解してきました。そして、電流連続の式を理解することによって、半導体内で電子の数が時間変化の下でどのように変わるのかを理解してきました。

 ドリフト電流に必要なのは②式より、キャリア密度移動度です。

 拡散電流に必要なのは④式より、拡散係数キャリア密度です。

 半導体を作成した際は、その品質を調べるためにこれらの量を知る必要があります。

 これらの物理量のうち、キャリア密度(電子密度とホール密度)と移動度の情報を教えてくれるのがホール測定である。

 図を使いながら順に追っていきます。

半導体に電流を流したときの第一段階

 上図の箱は半導体です。今、キャリアである電子について考えているので、n型半導体について述べます(p型半導体も同様に説明できる)。

 上図の回路では電流は時計回りに流れます。電子は電流とは逆方向へ動くので上図だと半導体に入った瞬間-x方向へ進みます。

 ここでy方向へ磁場をかけてみます。そうすると、電子にはローレンツ力が作用し、電子はz方向へ移動します。ここまでが上図からわかることです。次に電子が大量にz方向へ移動し、半導体のz方向上面に電子が溜まった場合を考えます。これが以下の図です。

半導体に電流を流したときの第二段階

 z方向上面に自由電子が集まり、同時にz方向底面では自由電子が不足し正に帯電します。

 一方が負に帯電し、もう一方では正に帯電した面より、電位差が生じます。電位差が生じる場所には電場があります。正から負へ電場は向かうので、z方向に電場が生じます。

 このとき、半導体へ侵入した電子には2つの力が働きます。1つは磁場によるローレンツ力、もう1つは電場による力です。そして、面白いことにこの力は釣り合います。数式で書くと

$$-eE=-evB$$

$$∴ E=vB$$

となります。 

 ところで単位断面積あたりの電流密度\(J=-e×n×v\)は電荷×電流密度×速度の式で表せる。これを用いると、電場は

$$E=vB=-\frac{J}{en}B・・・☆$$

と表せる。

 このように溜まった電荷によって電場が発生する現象をホール効果(Hall effect)と呼ぶ。p型半導体の場合も同様に発生する。

 ☆式を見て、未知の量と測れる量を区別する。

 まずは電気素量\(e\)は既知です。磁場\(B\)、電流密度\(J\)は測れる量です。電場\(E\)も後から示す関係式から求めることができます。

 したがって、電流密度\(n\)以外は全て測定より求めることができます。そしてそれらの量から、電流密度\(n\)も求めることが出来ます。これはホールの場合も同じです。そのため、我々はキャリア密度の求め方がわかりました。

半導体の上面底面を電圧計に繋ぎ、電位差\(V\)が測定される

 では、キャリア密度を求めるために生じた電場の求め方を理解する必要があります。これは半導体の厚さを\(W\)とすれば、電圧(電位差)と電場の関係より、

$$V=EW$$

と書けます。電位差\(V\)は上図のように電圧計を使えば測定できます。これを使えば☆式は書き直すことが出来ます。

$$n=-\frac{JB}{eE}=-\frac{\frac{I}{S}B}{e\frac{V}{W}}=-\frac{IWB}{eVS}$$

となる。\(S\)は半導体の断面積です。さらに、右辺の量は全て測定値なので、これにてキャリア密度が求まります。

 電流密度は単位断面積あたりに流れる電流なので、電流密度に面積をかけると半導体に流れる電流が求まります。

$$I=JS$$

 ところでドリフト電流のセクションで電流密度は②式のように表すことができることを学びました。

$$J=-env=-en\mu_eE_L (∵②)$$

このとき\(E_L\)は電子が向かっている方向と同じ方向へ向いている電場です。つまり横方向の電場で、ホール効果で生じた電場\(E\)とは別物であることに注意されたい。

(横方向の電場\(E_L=\frac{V_B}{L}\)なので、半導体の横の長さ\(L\)と外部電圧\(V_B\)より測定可能な量です)

これを\(I=JS\)に代入すると、

$$I=-en\mu_eE_LS$$

$$\mu_e=-\frac{I}{enE_LS}$$

となります。右辺は全て測定可能な量なので電子移動度を求めることが出来ます。

(復習 : 電子移動度は電場をかけたときに、どれくらいのスピードが出るかを表します。なので、半導体の性能を決める重要な物理量です。電子移動度が大きければ、小さな電場でも早いスピードを出すことが出来ます)

 当然、ホール移動度も同様です。そのため、我々は移動度の求め方もわかりました。

 ちなみに、私も学生のときにホール効果の学生実験をやったことがあります。しかし、そのときはこの実験の重要性はそれほど理解できていませんでした 汗

 半導体内での電流についての知識を身に付けました。

 第4講ではこれまでの知識を使って、半導体デバイスにおいて最も重要であるpn接合について学びます。名前の通り、p型半導体とn型半導体を合体させたときに起こる現象や仕組みを学びます。

参考文献

高校数学でわかる半導体の原理―電子の動きを知って理解しよう (ブルーバックス) (日本語) 新書 – 2007/3/21

3 COMMENTS

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