- 半導体が発展した歴史的な背景
- 半導体とは?
- 代表的な半導体——シリコン
- 半導体の種類について
- シリコン——原料からウェハーへ
- チョクラルスキー法が生まれた面白いお話
- 結晶の構造を見る方法
- シリコンの結晶構造
- IV(14)族の原子
- 化合物半導体
- 伝導帯と価電子帯から見る電子の動き
- キャリアとは?電子とは?ホールとは?
- 参考文献
※ 説明が不足している用語があったらググることを推奨します!!
※必要に応じて読み飛ばしてください!!
※検索窓を使ってキーワードを探すと便利です。
Windowsの方:Ctrl + F、Macの方:⌘ command + F
半導体を理解するとは、すなわち電子の動きを理解するということに繋がる。この後にちゃんと半導体とは何ぞや?のお話もするので少々お待ちください。
まずは半導体がどのようにして発展していったのか歴史的な経緯をお話する。
舞台はベル研究所(当時はAT&Tベル電話研究所)です。電話を発明したあのベルです。
第二次世界大戦以前は真空管というものが広く使われていた。その理由としては1910年代アメリカ東海岸から西海岸まで大陸を横断する形で電話線が敷設されており、真空管はその通信技術に必要な電気部品でした。真空管は大きく分けて2種類あり、1904年にフレミングによって発明された二極真空管と1906年にド・フォレストによって発明された3極真空管です。
2極真空管はは1つの方向にしか電流を流さない整流作用という特徴があり、電流を制御するという観点から考えれば重要な特性です。
3極真空管は信号を大きくする増幅作用というものがあります。通話信号を電話線で送ると様々な電気的な損失によって信号は小さくなっていきます。そのため、この信号を増幅させるために3極真空管が数多く使われていました。

この当時の科学者たちは、真空管に置き換わるものを考えていました。この研究は具体的には「真空管を固体のデバイスで置き換えられるのではないか」という考えのもとで鉱石を調べていました。
なぜ鉱石を調べていたかと言うと、1870年代にドイツのブラウンらによって、鉱石に細い金属線を抵触させると、整流作用が生じることがすでに知られていたからです。そこで科学者たちは、整流作用をもつ2極真空管が増幅作用を持つ3極真空管に発展させたように、鉱石も何らかの方法を使えば増幅作用が生み出せるのではないかと類推したのです。
ところで、なぜ真空管には整流作用と増幅作用があるのに、わざわざ代用品を探すような必要があったのでしょうか?
その理由は、真空管にはいくつもの欠点があったからです。
真空管は電球に似た構造をしていて、真空中で熱せられたフィラメント(細い金属線)から飛び出す電子を増幅に利用します。フィラメントを赤熱(真っ赤になるまで熱すること)させないと動作しないので、無駄な発熱が大きく多くの電力を消費します。もう1つはフィラメントの寿命は短いので多数の真空管を使用するAT&Aベル電話研究所の電話網では、フィラメントが切れた真空管を定期的に交換する必要がありました。さらに欠点を挙げると、ガラス管で出来ているので壊れやすく、メンテナンスに莫大な費用が掛かりました。つまり、コストの問題です。
そんなわけで第二次世界大戦中からベル研究所ではどの鉱石が有望であるか、それらの結晶はどのように作るかの研究は既に行われていました。
なぜなら、レーダーや通信機の開発のために必要だったからです。
様々な鉱石を使い、整流作用の実験が行われていました。特にどこまで高い周波数で使えるかというのが調べられました。人間の耳に聞こえる音の周波数の上限が約20kHzです。Hzはヘルツと読み、1Hz=1秒間に1周期の振動数のことを意味しています。
(※ 周期T(s)、周波数f(Hz)としたとき、これらにはf=1/Tの関係が成り立ちます。1秒間に1周期なのでT=1sを代入すると当然f=1Hzとなります)
このことから、20kHzの電気信号まで整流作用があれば十分であることがわかります。しかしながら、鉱石の整流器を当時のレーダーに使用するにはMHz(Mは10の6乗)からGHz(Gは10の7乗)の高い周波数まで対応する必要がありました。
飛行機や船をレーダーで識別するには1m程度の空間分解能が必要です。分解能とは装置などで対象を測定または識別できる能力のことを言います。例えば、大抵の物差しは1mmごとに識別できるので1mm程度の分解能があると言えるでしょう。電波のスピードは秒速30万kmですから、波長の1mの電波の周波数は、秒速30万kmを1kmで割ることで
\(30×10^4×10^3 {\rm (m/s)}/1{\rm m}\)
\(= 3×10^8 {\rm Hz} \)
\(=(300 {\rm MHz})\)
となります(※ 周期(s)=1/周波数(Hz))。
ちなみに、アメリカ、日本以外にイギリス、ドイツも電子デバイスの開発に力を入れていました。
まとめると、レーダーの識別には空間分解能の性能が高いものが必要である。そして空間分解能を高くするには、高い周波数が必要であるということである。
最終的にベル研の整流作用の実験で最も高い周波数まで応答できる鉱石として残ったのが、シリコンとゲルマニウムという2つの半導体でした。どちらもIV(14)族であり、上下に並んでいる(以下の周期表を参照されたい)。

驚くべきことに、当時はシリコンもゲルマニウム整流器としては使われておらず、実績がありませんでした。しかし、研究者はこの2つを選択し、8年の歳月をかけて研究に取り組みました。1947年に大きな進歩がありました。ベル研究所で研究していた研究者が半導体の表面の性質を調べていたとき、ある特殊な条件で増幅作用が生じることを発見したのです。
それがトランジスタの発明へ飛躍する第一歩でした(後から説明しますが、真空管の代わりとなるものです)。
世の中には電気を通すものとそうでないものがあります。
例えば、銅や銀や鉄などの金属は電気を通します。こういう電気を通す物質を導体あるいは伝導体と言います。
一方で、ガラスや陶器などは電気を通しません。こういう電気を通さない物質を絶縁体とか誘電体と言います。
では、半導体とはどのようなものなのか。それはある条件下では電気を通し、ある条件下では電気を通さない物質のことを言います。
現在最も広く使われている半導体はシリコンです。
シリコン(silicon)はケイ素と日本語では呼ばれ、元素記号はSiです。
これからはシリコンについて説明をしていきます。
余談 : よく整形などシリコンを身体に埋め込んだなどと報道されているのを見ますが、あのシリコンではありません。美容整形に使われるものは、シリコーン(silicone)と呼ばれているものでケイ素を含む樹脂の化合物(2種類以上の元素で構成されている)です。
シリコンは地上では酸素に次いで2番目にありふれた元素として大量に存在しています(※ 気になる方はクラーク数を参照)。
自然界の殆どでは、シリコンは酸素と結合してSiO2(二酸化ケイ素)として存在しています。では二酸化ケイ素はどこにあるのかというと岩石の主成分として存在しています。そして、純度の高いSiO2が結晶化したものが水晶です。人工物としては、ガラスや陶磁器などの主成分として存在しています。
ここで注意されたいのは、純粋なシリコンは自然界には存在しないことです。
つまり、シリコンが欲しければ人間が精製して取り出す必要があります。
まずは原料となるSiO2を溶かしてドロドロにするところから始まります。そして酸素を切り離す化学反応(還元とも呼ばれる)により純粋なシリコンを取り出します。SiO2を溶かすには1400℃以上の温度で熱する必要があります。そのため電気炉と呼ばれるものを使います。電気炉は大量の電気を使います。なので水力発電による安価な電力が使える北欧の会社が主要なメーカーになっています。精製されたシリコンの純度は大変高いです(定量的な側面からも99.9…99%と9の数が10桁から11桁ほど並ぶくらいです)。
なぜシリコンについて述べたのか、その理由は用いる半導体によってトランジスタやレーザーの特性が変わってくるからです。そして、それは半導体の持つ本来の性質に依存しているからです。
つまり半導体選びは非常に重要なのです。例えて言うと、道具選びに似ています。マラソンランナーは決して下駄を履いて走りません。逆も然り、おじいちゃんがミズノのサッカーのスパイクを履いてアスファルトの上を散歩しません。このように誰が何を使うのか、使用用途を考えて普通はものを選びます。半導体も同じく、シリコン半導体を使うのか、ゲルマニウム半導体を使うのかによってトランジスタの性質は大きく異なります。
全ての電化製品に半導体が入っていると言っても過言ではないくらい、人類は半導体に恩恵を受けています。どの半導体を研究し製品化するのかは、研究者や企業にとって重大な意味を持ちます。
ちなみに、私は大学院生時代にシリコン半導体を使った半導体検出器というものを研究していました ☆
純度の高いシリコンが精製出来たら、次はこれを結晶にします。
では、結晶とは何なのか?
結晶とは原子が規則性を持って綺麗に並んだ構造のことを言います。
SiO2から精製されたシリコンの結晶の並びは出鱈目です。このように微小な結晶が多数集まってできた結晶のことを多結晶といいます。なので綺麗な配列にする必要があります。繋ぎ目のない綺麗な単一の結晶のことを単結晶と言います。つまり、多結晶から単結晶にします。
今回紹介する方法はチョクラルスキー法というものです。ベル研究所でもチョクラルスキー法が用いられていました。まずは、SiO2から精製された純度の高い多結晶シリコンをるつぼ(耐熱容器)の中で再度ドロドロに溶かします。このとき、シリコンの温度は融点(1410℃)よりわずかに高い状態にしておきます。次にドロドロに溶けたシリコンを上手いこと取り出す必要があります。どうやるかと言いますと、釣りと似ています。棒をイメージしてください。棒の先端に微小なシリコン(種結晶と言われています)を取り付けてそれをドロドロのシリコンの中に入れます。それをゆっくりと回転させながら引き上げます。するとこの種結晶にくっついた液体のシリコンが固化します(結晶成長とも言います)。これこそが単結晶です。

引用URL : チョクラルスキー法 – Czochralski method – JapaneseClass.jp
引き上げられた単結晶シリコンの固まりをインゴット(ingot)と呼びます(下の画像参照)。

引用URL: ingotウェハー – Bing images
インゴットの先端の尖った部分が種結晶で引き上げるにつれて徐々に大きくなっていきます。そのため、最初のうちは円錐状になります。引き上げるスピードは材料の種類によって異なります。シリコンの場合は1分間に1mm程度引き上げるので、凄く時間がかかります。そしてインゴットを輪切りにして薄い板状にしたものをウェハー(wafer)と呼びます(上記の画像の右側の円盤)。チョクラルスキー法のこれまでの流れの動画をyoutubeから探してきたので参考程度に参照してみてください。30秒くらいから見たいシーンが始まります。
チョクラルスキー法の発明者はヤン・チョクラルスキー(1885~1953)です。
この当時、ボールペンのようなペンとインクが一体化したものがまだ世間に浸透はしていませんでした(1884年に発明はされましたがインク漏れが酷く、まともに使用できる代物は1943年に登場しました)。そのため、ペンとインクを別々に使っていました。
チョクラルスキーの発明はある失敗により生まれました。彼はるつぼにスズを入れて溶かした後、それが固化する過程を研究していました。そのとき、何かの考えが頭に浮かびノートを取り始めました。そのことに夢中になりながら、彼はペンにインクを付けようとインク瓶へと手を動かしますが、誤ってるつぼの中にペンを入れてしまいました。そして、それを引き上げると金属製のペン先にはスズが引き延ばされながら付いてきました。彼はこれを逃しませんでした。スズの固体化を調べる実験は台無しになりましたが、彼は結晶成長の方法を見つけました。ここから、彼は良好な結晶成長の方法を探り、チョクラルスキー法に辿り着きました。
1940年代にベル研究所で半導体の結晶成長に応用されて以来、シリコンの結晶成長の方法としては大活躍することになりました。
シリコンウェハーの上にはトランジスタや集積回路を作製します。そのため、ウェハーが大きいほど、多くのトランジスタや集積回路が生産できるので製造コストは下がります。
そのこともあり、シリコンウェハーはこの数十年でだいぶ大きくなりました。この記事を書いているのが2021年ですけど、ネットで見る限りだと、大きいもので直径12インチ(約30cm)のウェハーが使用されています。るつぼもかなり大きなものが使われています(人が入れるくらいの写真をよく参照します。ドラム缶より直径は大きいと思います)。
結論から言いますとX線を使います。
ところで皆さんは見えないものを把握するときはどのようにしてその形や構造を把握しますか?
例えば、目の前に透明の物体があって、自分の周りに小石が沢山あったとしましょう。みなさんはどのようにしてその物体の形を予想しますか?
恐らく小石をその物体に投げてみることでしょう。そして、小石が跳ね返った方向から逆算して透明な物体の形を想像します。X線で結晶構造を把握するのも基本はこれと同じです。X線を結晶に向かって照射して、どこに跳ね返ったかで結晶の構造を調べます。
では、次の疑問としてはどうしてX線を使うのかという疑問が生まれると思います。光の性質と人間に関する内容です。
雪の結晶や食塩の結晶などは肉眼で見たりすることができますが、シリコンの結晶は微細なので肉眼では見れません。単結晶のお話をしたとき、単一に綺麗に原子が配列されていると言ったと思います。原子同士の距離は、0.24nmです。nmはナノメートルで\(10^{-9}\)mになります。めちゃくちゃ短い距離なのです。人間の目は、光を頼りに視界を作っています。光は波であると言われており、その波の1周期の距離を波長と言います(波線を書くと山谷山谷…と連続します。この山谷1セットを考えたとき、初めのスタート地点から元のスタート地点に戻ってきたときの直線距離が波長です)。そして、光には様々な波長があります。人間の目で捉えることが出来るのは可視光線の波長になります(以下の画像参照)。しかし、可視光線の波長は最も短いもので青い光の400nmです。先ほどの原子間の距離0.24nmに比べるととても大きく、肉眼で識別するのは不可能です。では何ならいけるのかと下の表を見ると、X線から波長がちょうど原子間の距離を識別できるものになってきています。

引用URL : vis.jpg (640×287) (toho-u.ac.jp)
X線から放射線と呼ばれるものに部類され波長が短くなるにつれてエネルギーが大きくなるのでγ(ガンマ)線などを扱うとなると、かなりの危険が伴います。なぜなら放射線は生き物のDNAを傷つけるからです。そのためレントゲンなどにはX線が使用されています。つまり、何をどのように使用するという観点から結晶構造の解析にはX線がベストだということがわかります。ここまでのお話をもう一度まとめると、原子間の空間を識別するのに可視光を使う限り結晶の構造は見分けられません。つまり、どんなに優れた光学顕微鏡を持って来ても無理です。なのでX線を使いましょう、というお話です。
次にX線を結晶に照射したときの振る舞いを理解するために、光の回折と回折格子についてお話をします(あとから回折格子を結晶に置き換えて話します)。例えば、光をある障害物に照射したとする。障害物と衝突した瞬間を回折(散乱とも言えます)と呼ぶとすると、回析は2種類考えられます。反射型と透過型です(レントゲンで骨が移る部分は反射、その他の臓器が映らなかったところは透過をしたというイメージです)。では、回折格子は何かというと、ここでは回折を利用して何かをするために作られた規則的に並んだ凹凸状のものだと思ってください。例えば、CDやDVDの裏側を見てください。あれは回折を利用して読み取りを行うために、凹凸に作られています。これが回折格子です。
では回折格子の回折条件というものを見て行きましょう。回折条件は隣の溝で回折した光との光路差Lが光の波長λの整数倍になる方向で光が強め合うというものです。
単純に考えるために可視光線を測定する場合を考えて見ましょう。

例えば光が垂直に入射した場合を考えると、nは正の整数として、
\(n\lambda=L=dsin\theta \)
と表すことが出来ます。左辺は波長λの光がn個あることを意味しています。右辺はその距離を幾何学的に計算したものです。
dは隣の溝との間隔です。通常はn=1の回折使われることが多く、一次の回折光と呼びます。上の式を見ると、左辺の波長λが変わると右辺の回折角θも変わります。故にn=1と仮定すると、回折角θを測れば波長λがわかります。
付け加えると、可視光を測定する場合、溝の間隔dは1μm程度です。なので「回折格子を使って測る波長と、回折格子の溝の間隔が同じ程度の大きさである」ことに注意してください。この回折格子の溝の間隔は使用目的上そういう大きさに都合よくしたということです。
しかし、測定では回折角θだけでなく、回折光の強度も測定します。こうして得られた回折光の強度を縦軸に、波長を横軸に描いたグラフがスペクトルです。
では回折格子を結晶に取り換えて考えて見ましょう。我々が取り扱う結晶は単結晶でした。単結晶は原子が規則的に並んでいるとお話しました。原理的には先ほどの回折格子の場合と同じですが、1つだけ違うとすれば、X線が結晶内部にまで侵入するという事です。なので、表面の回折だけでなく、内部原子による回折も考える必要があります。なので少し複雑になりますが、回折格子での回折が理解できていれば理解できます。まずは下の図を見てください。1個1個の丸が原子で距離dで規則的に並んでいると仮定します。

ここでも同じく光路差を考えると、
\( n\lambda=L=2dsin\theta \)
と表すことが出来ます。nを一次の回折と仮定して(n=1)、どんなX線を使うか(どんな波長λのX線を使用するか)を決めて、あとは回折角を測定してやれば、シリコンの原子間距離がわかります(ブラッグの回折条件とも呼ばれています)。原子間の距離がわかった。これでようやく結晶の構造がわかったという話に繋がりました。かなり長かったですね 苦笑
雑談ですがドイツのラウエが結晶にX線を照射すると回折が起こることを発見して、その後ブラッグ親子がこの回折現象からブラッグの回折条件を導きました。結晶を調べる方法はラウエ法と呼ばれており、物理学科の学生さんなんかは学生実験でやったことがある人もいるかもしれません。この方法で多くの物質の結晶構造が明らかになりました。1914年にラウエ、1915年にブラッグ親子がノーベル物理学賞を受賞しました。ちなみに、ブラッグ子の方は当時25歳でした。
上記の方法で結晶構造の調べ方がわかりました。そして分かった、シリコンや二酸化ケイ素の結晶構造を見てみると以下のようになっていることがわかりました。ちなみに、このシリコンの構造はダイヤモンドと同じです。ダイヤモンドは炭素で構成されており、勿論鉛筆の芯(黒鉛)も炭素で構成されています。ダイヤモンドと黒鉛の違いは結晶構造の違いにあります。同じ原子でも結晶構造が違うだけで価値が大きく変わります。

引用URL : 化学講座 第9回:共有結合性結晶と分子性物質 | 私立・国公立大学医学部に入ろう!ドットコム (sidaiigakubu.com)
シリコンの画像を見てください。青の原子間を黒の線で結んでいます。これは電子です。1つの結合には2つの電子が要ります。なぜ2つの電子がいるのかは以下の画像を見てください。

引用URL :【図解】半導体の特徴とN型半導体・P型半導体ついて | Archive of Yone (elite-lane.com)
画像の左側を見ると、最外殻電子の数は4つです。このM殻には最大8個の電子を入れることができます。そこで残りの4個を他のシリコン原子から持ってきましょう。それが画像の右側です。1つのシリコン原子の周りには8つの電子があります。これはそれぞれの原子が足りない分を共有していると考えてください。そしてそれこそが原子同士を拘束している力になります(共有結合)。
シリコンの最外殻には4個の電子がありました。このように最外殻に4個電子がある原子をIV(14)族原子と呼びます。周期表というものをご存じでしょうか、メンデレーエフという人が元素を分類するために作ったものです。周期は行を表し、族は列を表します。つまり14列目が14族です。

上の段から順に質量が軽いので、IV族を質量の軽い順に並べると、C(炭素)、Si(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)になります。どうしてダイヤモンド(炭素)がシリコンと同じ構造を持っていることにも納得がいくと思います。
シリコンとゲルマニウムが半導体として使われているというお話はしました。では、ダイヤモンドはどうなのかと思ったかもしれません。実はダイヤモンドも半導体として働きます 笑
なぜこれほど、普及されていないかと言えばコストが高いからです。あと加工が難しいからです。ちなみにダイヤモンドのカットはブリリアンカットと呼ばれており、1919年にベルギーの数学者兼宝石職人であるトルコフスキーがダイヤモンドの反射・屈折率といった光学的特性を数学的に考慮して最も美しく輝く型を理論的に導き出しました。もし実用化されたら、ティファニーにでもキラキラ光るトランジスタとして並んで、クリスマスに女性へプレゼントするのですかね。
シリコンもダイヤモンドもゲルマニウムも半導体として使うことができる。そしてそれらの結晶構造は計8個の電子で4本の結合を作っている話をしました。これはあくまでIV族原子だから成せる芸当です。
しかし、IV族原子以外の元素でもダイヤモンド構造(四面体)を作ることができます。その方法は2種類以上の元素を組み合わせる方法です。そしてそれを化合物と呼びます。具体的にはⅢ(13)族とV(15)族の化合物半導体です。四面体の各頂点にV族原子を置き、四面体の中心にⅢ族原子を置くことで上手く行きます。なぜなら、Ⅲ族の最外殻電子は3個で、V族の最外殻電子が5個だからです。シリコンのときは4+4=8、この化合物は3+5=8となり一致します。最外殻原子が8のときは比較的に安定しています。そのため、もとから8個の18族(希ガス)は安定しており、他の原子とは反応を作りません。
このⅢ族とV族の最も多い組み合わせはGaAsでヒ化ガリウム(正式名)と言います。しかし、通称はガリウムヒ素とそのままガリウムGaとヒ素Asを繋げて読むことが多いそうです。GaAsのような化合物の半導体とSiのような単体の半導体でいくつか異なる性質を持っています。最も重要なポイントは化合物の半導体は電気を流すことで光らせることが出来ます。ここで注意されたいのはただ化合物に電気を流せば光るということではなく、特殊な加工を施す必要はあります。しかし、Siの場合はどんな特殊な細工を施しても実用的な強い光を出すことは出来ません。後にこの理由をお話します。
GaAsはAsの化合物でAsには毒性があります。つまり、Siより取扱いに危険はあります。それでも光らせるというメリットがあるので広く使われています。GaAsの結晶構造は基本的にはSiと同じ正四面体です。

引用URL : https://ebrary.net/82321/computer_science/carrier_physics_junction_electrostatics
このようなGaの周りに4個のAs、Asの周りには4個のGaがある構造を閃亜鉛鉱構造(せんあえんこう構造)と呼びます。
GaAs以外の組み合わせを見ると、InAsやGaPなど様々な組み合わせがあり、この化合物の組み合わせは周期表が下に行くほど、発光の波長が長くなり(赤色に近づく)、周期表の上側に行くほど波長が短くなる(青色に近づく)。なのでこの面白い特徴を活かせば新しい半導体を作ることが出来ます。

例えば、InAs、GaAs、GaP、InGaNの順で発光する波長が長いです。
この話をすると青色のLEDの話は外せません。半導体を光らせる研究は1990年ごろまでに赤と緑の発光に成功していましたが青色は成功していませんでした。なぜ青が重要かと言うと、色の三原色から他のあらゆる色も作れるようになるからです。赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の頭文字を取りRGBという言葉がありますが、あれはこの3色を意味しています。

引用URL : 色の基本概念!光の三原色と色の三原色 (iro-color.com)
そしてこの青色の発光に辿り着いたのが日本の研究者というのは有名な話です。周期表の上の方の元素を使えば、波長の短い化合物が作れることがわかります。なので窒素NとガリウムGaの組み合わせGaN(窒化ガリウム)に少数の研究者が目を付けました。しかし、なぜこの化合物を作るのが難しかったかというと、GaNは結晶を成長させるのが容易ではなかったからです。
1993年に青色の発光に成功して、その後、ディスプレイや交通信号など様々な部分に応用されました。さらには青色の半導体レーザーが開発されて、それは現在のブルーレイディスクなどに応用されています。
このように半導体材料の研究は新たな市場を開拓することもあり、現在でも次なる半導体の研究が行われています。
半導体のプロセスを学ぶことは、現代の生活様式の背景も見えてきて、とても奥が深くて面白いです ☆
先ほど、半導体を光らせるなど色のお話をしました。ここでは、どのように電子が動いたとき光が発光するのか、というイメージを掴んで貰います。
内容自体は、既に物性物理学に位置しています。そのため面白いですが、多少の数式が登場します。アレルギーがある方は、必要に応じて数式だけ目を瞑ることをおすすめします。
トランジスタなど様々なデバイスを動作させるためには半導体の中に電流を流すことが必要です。そこで半導体の中を流れる電流の性質を見ると理解が深まります。SiやGaAsなどの結晶構造(正四面体)を勉強しました。原子同士は電子による共有結合で結ばれており、黒い直線の棒で表現されていました(下の図の左側を見てみてください)。

引用URL : 化学講座 第9回:共有結合性結晶と分子性物質 | 私立・国公立大学医学部に入ろう!ドットコム (sidaiigakubu.com)
この図では最外殻電子の2つが黒棒として表現されており、残りの電子は描かれてはいません。

引用URL :【図解】半導体の特徴とN型半導体・P型半導体ついて | Archive of Yone (elite-lane.com)
最外殻電子以外の電子(上の図だとK殻、L殻が該当)は内側へ行くほど安定しており、それは原子核との結びつき(束縛力)が強いからです。これは原子核が陽子と中性子で構成されており、陽子の正の電荷と電子の負の電荷が引き合う特性があるからです(クーロンの法則)。

引用URL : 電気陰性度とは? | ネットdeカガク (netdekagaku.com)
上図の式を見てください。電子と陽子の距離rが近づくにつれて、クーロン力Fは大きくなります。反対に距離rが大きくなるとクーロン力Fは小さくなります。このように束縛する力を考えたとき、最外殻電子に働く束縛力が1番小さく動きやすいことがわかります。なので基本的には共有結合や何かしらの電子の動きを考えるときは最外殻電子のことだと思ってください。
通常状態では最外殻軌道まで電子は詰まっております。この通常状態というのは温度が低いときを指します。そして温度が低いというのはエネルギーが低いともいい、安定している状態です。逆に温度が高いときはエネルギーが高いといいます。イメージとしては温度が高いと粒子が活発に動き、運動エネルギーが大きいからです。
ところで電子はこの最外殻軌道を超えた場所へと行くことができます。その条件は温度が上がった場合やドーピングした半導体(後から述べます)を使ったときで可能になります。この最外殻軌道を超えた軌道は隣の原子と結びついており空間的にも幅広く移動することが出来ます(自由電子などとも呼ばれます)。この自由に移動ができる電子と出来ない電子をわけて考える必要があります。それをエネルギーを使って考えるとわかりやすいです。それがバンド図になります。電子が自由に移動できる軌道のことを伝導帯と呼び、電子が自由に移動できない軌道のことを価電子帯と呼びます。

上図を見て見ましょう。帯は3種類あります。価電子帯、禁止帯、伝導帯です。価電子帯には電子が沢山詰まっており身動きが取れません。禁止帯には電子が存在しません。伝導体には電子存在し、この電子はエネルギーが高く自由に動き回ることが出来ます。では、価電子帯の電子がどのようにしてエネルギーの高い伝導帯へと移動し自由電子になるのでしょうか。それは価電子帯の電子が外部から光のエネルギーを受け取って伝導帯へと上がっていきます。逆に伝導帯から価電子帯へとエネルギーが落ちて電子がそっちにいくこともあります。このとき、発光を起こして電子はエネルギーがなくなり価電子帯へと収まります。この発光こそが半導体から作り出す光です。しかし、バンドギャップが大きいとそもそも伝導帯に存在する自由電子が少なかったり(バンドギャップを価電子帯から電子をもってくるにはあまりにもエネルギーが大きすぎるときなど)、発光させるのが難しかったりしますので(伝導帯の電子の数が少ないから)、バンドギャップを上手いこと工夫して狭めるなど色々な改良余地はあり研究者は色々なことをしています。
シリコンのバンドギャップエネルギーは1.1eV、GaAsのバンドギャップエネルギーが1.42eVになります。もうすでにお気づきかもしれませんが、この受光してエネルギーが上がったり、発光してエネルギーが下がったりすることを利用しているデバイスが受光デバイスや発光デバイスの部類に入るので半導体の電子と光の関係も見えてきたと思います。このように電子と光の間にはエネルギー保存則が存在します。これはバンドギャップの大きさによって必要な光のエネルギーが対応して、それらの対応によって波長が異なり、波長が異なるということは色が異なるということを表しています。

引用URL : vis.jpg (640×287) (toho-u.ac.jp)
例えば、Siのバンドギャップエネルギー1.1eVには光の波長1.1μm(\(1.1×10^{-6}\)m)に対応し、GaAsのバンドギャップエネルギー1.42eVには光の波長0.87μm(870nm)が対応します(出し方は後述)。可視光線が人間の目で捉えることが出来る光の領域なので、Siの場合だと光が発光しても見えない赤外光の場合に該当し、GaAsの場合もギリ赤色が見えるくらいの可視光に該当していることがわかります。
これまでお話した内容の点と点が線のように繋がってくると思います。
半導体工学ではエネルギーの単位はJ(ジュール)ではなくeV(エレクトロンボルト)です。eは電子1個の電荷の大きさ(電気素量)を表しているので、1eVとは1Vの電位差がある電極の間を電子1個が移動したとき、電子が受け取る運動エネルギーに対応します。勿論、Jに単位を変換することも可能ですが取扱いの都合上eVを採用した方がやりやすいのです。例えば、
\(1eV=1.602×10^{-19}J\)
ですが、明らかに右側の数値だと1.42eVなどを扱うときに面倒な感じがしますよね。このように臨機応変に単位を選ぶ必要もあります。
また、光のエネルギーは量子力学によると(機会があれば語ります)、
\(E=h×ν= \frac{hc}{λ} \)
と表すことができます(プランク定数h、光速c、波長λ、振動数ν)。プランク定数h(\(6.626×10^{-34}\)m2kg/s)と光速c(\(2.2998×10^8\)m/s)は既に決まった定数なので、波長λが変われば光のエネルギーが変わるという式の解釈ができます。ちなみにこのプランク定数と光速の数値を代入して、
\(λ\mu m≃\frac{1.24}{E[eV]}\)
と表すことが出来ます。これはバンドギャップエネルギーと波長との間の換算がすぐに出来るので便利です。先ほどのSiやGaAsのバンドギャップエネルギーから、波長を出せたのはこの式があったからです。
第二講へ行くにあったって、知っておくべき基本用語がある。それがキャリアである。キャリアとは、電荷を運ぶ粒子のことである。例えば、自由電子は負に帯電している粒子です。次に説明するホール(正孔)とは正に帯電しているように見える粒子のような振る舞いをします。ホールのことを粒子と言わないのには理由があります。ホールは粒子ではなく、中性的な状態から電子が抜けた穴(ホール)が相対的に正に帯電しているとみなすことができます。次の例を見ればこの自由電子とホールの違いを理解することが出来ます。
また用語説明に入ります。真性半導体と不純物半導体について話をします(これまでの復習です)。真性半導体とは不純物を含まない半導体です。シリコン半導体やゲルマニウム半導体などが該当します。一方で、不純物半導体とは化合物半導体です(言い方が違うだけです)。化合物とは2種類以上の元素で構成されている物質のことです。つまり、不純物半導体とは真性半導体に不純物を加えてキャリアの量を調整することが出来る半導体のことです。
では具体的に図として見ていきます。

真性半導体にSiを使ったときの特徴は14族元素、最外殻電子(4つ)、共有結合、真性であるなどが挙げられます。
では不純物半導体を見ていきます。不純物半導体には2種類あり、P型とN型と呼ばれるものです。これは自由電子とホールのキャリアという考え方で説明できます。

上図は14族元素Si(最外殻電子4つ)に13族元素(最外殻電子3つ)を加えたものです。結果として13族元素の周りに1つだけ穴(ホール)が出来ました。他の電子がこの穴に入ると、他の電子の元居た場所に新たな穴が出来ます。このようにしてホールが自由電子のように泳ぎ回ることができます。電子が1つ減るということ(負の電荷2個が1個減る:(-2Q)-(-Q)=(-Q))を別の見方で正に帯電した粒子がやってきた(負の電荷2個に正の電荷1個加わる : (-2Q)+(+Q)=(-Q))という相対的な見方が出来ます。つまり正に帯電した粒子が動いているように見えます。つまりP型半導体とはキャリアとしてホールを用いる半導体のことです。

P型がわかれば、N型半導体はキャリアとして自由電子を用いる半導体であることがわかります。つまり、15族元素(最外殻電子5つ)を不純物として14族元素(最外殻電子4つ)に混ぜて電子が1つあまりこれが自由に移動しているものです。このP型N型が理解出来れば、PN接合も理解できます。
この後の講では、半導体の中のキャリアの数に関する内容、キャリアを流す場合(電流を流す場合)、それらの話をまとめて、半導体デバイスで最も重要なpn接合の構造のお話、最後にpn接合を使ったトランジスタやデバイスの話が続きます。
参考文献

It’s an awesome piece of writing designed for all the web viewers; they will get benefit from it I am sure.