ルベーク積分その3

目次
  • 開集合と閉集合
  • 外測度
  • 外測度0の集合
  • カントール集合

開集合と閉集合

第三講では外測度についてまとめた。

第一講で集合Sを外側から区間の和で近似してゆき、究極のサイズとして外測度を求めるという話をしたと思う。

第三講では実数集合\(S \subset \mathbb{R} \)に対して、外測度と呼ばれる実数\(0≦\mu ^*(S) ≦ ∞\)を定義する。

 そのために必要な概念から始める。

 開集合と閉集合は数学のトポロジーと呼ばれる分野の重要な概念である。

詳しい話は、他の参考書に任せるとして、今回は必要な話だけ参考文献からpick upした。

 また定理や補題の証明は全てはしないので気になった方は参考文献から確かめて頂きたい。

 開集合とは、任意個の開区間の和集合として表される集合のことをいう。

それぞれの開区間\((u,v)\)は有理数の稠密性(ある二点間の有理数の間には有理数が詰まっている)により、

\( (u,v) = \cup \{ (p,q) : u<p<q<v, p,q \in \mathbb{Q} \} \)

と可算個の開区間\((p,q),p,q \in \mathbb{Q} \)の和集合で表される。

 開集合は可算個の開集合の和集合で表される。このことが重要である。

そして、空集合\(\emptyset\)は0個の開区間の和集合と考えれば開集合である。

実数全体\(\mathbb{R} = (-∞,∞)\)も開集合である。

開集合の性質として以下二つがある。

(i)任意個の開集合\(U_\lambda , \lambda \in \Omega\)の和集合\(\cup_{\lambda \in \Omega} U_{\lambda} \)は開集合である。

(ii)有限個の開集合\(U_1,U_2,…,U_n\)の共通部分\(U_1 \cap U_2 \cap … \cap U_n\)は開集合となる。

 これに対して閉集合とは、開集合の補集合という。これは決して、開集合ではないものは閉集合であるという意味ではない。

例えば、\([u,v),(u,v]\)は半開区間であり、開集合でも閉集合でもない。

これに対して、閉区間\([u,v]\)は閉集合である。

なぜなら、\(\mathbb{R} \setminus [u,v] = (-∞,u) \cup (v,∞)\)だからである。

 実数空間の場合は、開でかつ同時に閉である集合は全空間\(\mathbb{R}\)と空集合\(\emptyset\)しかない。

 \(F\)が閉集合である、というときの「閉」は次を意味する:

\(x_n \in F, n=1,2,…, \)and \( \lim_{n→∞} x_n =x ⇒ x \in F \)

 開集合の場合と同様に、閉集合の次の性質をもつ:

(i)任意個の閉集合\(F_\lambda , \lambda \in \Omega\)の共通部分\(\cap_{\lambda \in \Omega} F_{\lambda} \)は開集合である。

(ii)有限個の閉集合\(F_1,F_2,…,F_n\)の和集合\(F_1 \cup F_2 \cup … \cup U_n\)は閉集合となる。

 \(F\)が有界閉集合のとき、

\(u=\inf F, v=\sup F\)

とおくと、\(u,v\)は有限の実数であり、\(u,v \in F\)であるから、

\(u=\min F, v= \max F\)

である。

 有界な閉集合の性質にはコンパクトと呼ばれるものがある。

どういう意味かというと例えば、\([0,1]\)を様々なサイズの短い線分で覆いつくそうとするとき、無限個は必要なく、必ず有限個の線分で作業が終わるという意味である。

例題を考えると[5,9]という閉集合は、(1,5),(4,6),(3,8), (6,10)という和集合で考えれば、\((1,5) \cup (4,6) \cup (3,8) \cup (6,10)=(1,10)\)という開集合でcoverすることが出来る。勿論、無限個の開集合で閉集合をcoverすることができるが、有限個の開集合で覆うことも出来る。それをコンパクトという。

 実数の集合の場合には、これは次のような定理が成り立つ。

定理3.1 部分集合\(F \subset \mathbb{R} \)に対して次は同値である:

(i)\(F\)はコンパクトである。

(ii)\(F\)は有界閉集合である。

(iii)\(F\)内の点列は、\(F\)の点に収束する部分列を持つ。

証明 :

(i)⇒(ii)

コンパクトであれば、有界である。

コンパクトであれば、閉集合である。の二つに分けて説明する。

まずコンパクトであれば有界であるは、対偶を取ると、有界でなければコンパクトではないを示せばよいことがわかるので、

\(F\)が有界でなければ、\(F \subset \cup_{n=1}^∞ (-\frac{1}{n},\frac{1}{n})\)としたとき、

右辺のどの有限個の区間をとってもその和集合は\(F\)は含まない。

次にコンパクトであれば閉集合であるは、対偶を取ると、閉集合でなければコンパクトでないを示せばよいことがわかるので、

\(F\)が閉集合でなければ、ある\(x \notin F\)は 点列\(\{ x_n \}\)が\(F\)内に取れる。

\(x\)とすべての\(x_n\)からなる集合\(C\)は閉集合であり、

その補集合\(\mathbb{R} \setminus C\)は開集合である。

各\(n\)に対して点\(x_n\)を含む開区間\(U_n\)を

\(x_m \notin U_n \)for \( n≠m\)

と取れば、\(\mathbb{R} \setminus C\)とすべての\(U_n\)の和集合に\(F\)は含まれるが、これらのどの有限個をとってもその和は\(F\)を含まない。

(ii)⇒(iii)

\(F \subset (u,v) \)とし、\(F\)内の無限点列\(\{ x_n \} \)を任意にとる。

区間\([u,p_1],[p_1, v], \)where \(p_1= \frac{u+v}{2} \)の少なくとも一方は無限個の\(x_n\)を含む。両方かもしれないが、仮に左側の区間がそうであるとして話を進めると、

\([u,p_2],[p_2, p_1], \)where \(p_2= \frac{u+p_1}{2} \)

の一方または両方は無限個の\(x_n\)を含む。ここでさらに右側がそうであれば、

\([p_2,p_3],[p_3, p_1], \)where \(p_3= \frac{p_1+p_2}{2} \)

の一方または両方は無限個の\(x_n\)を含む。この操作を続けていけば区間列

\([u,v] \supset [u,p_1] \supset [p_2, p_1] \supset …\)

が取れ区間幅は→0となる。それぞれの区間から相異なる点\(x_{n1},x_{n2},x_{n3},…\)を取り出すことができる。これが、収束する部分列である。

(iii)⇒(i)

\(F\)がコンパクトでないものとすると、無限個の開集合\(U_1,U_2.…\)が取れ、

\( F \subset \bigcup _{n}U_n\)

であり、かつ、どの有限個の\(U_n\)の和集合も\(F\)を含まないこととなる。

よって各\(n\)に対して点

\(x_n \in F \setminus U_1 \cap U_2 \cap … \cap U_n \)

が取れる。

すると、条件から\(\{ x_n \} \)は収束する部分列\(\{ x_{nk} \)を持つ。

\(\lim_{k→∞} x_{nk} =x\)とすると、

\(x \in U_n\)

となる\(n\)が取れ、収束の定義から、

\(x_{nk} \in U_n \) for sufficiently large \( k\)

となる。

これでは不合理である。

と言った感じで何となく感覚的に分かった気になっているが、

こちらは別で勉強をちゃんとした方がより深い理解が得られると思います。

外測度

 開集合\(U\)を開区間の和集合で表すとき、

構成するッ開区間\((u,v),(c,d)\)について、

\(u<c<v<d\)

であれば、\((u,v)\)を拡張して\((u,d)\)を考えることとすれば、より大きい構成要素が得られる。

この操作を出来る限り行えば、\(U\)は実は互いに素な可算個の開区間の和集合で表される:

\(U=(u_1,v_1) \cup (u_2,v_2) \cup … \cup (u_n, v_n) \cup …\)

\((u_i,v_i) \cap (u_j,v_j) = \emptyset \) for \(i ≠ j\)

これは表し方は一通りで、特に\(\mathbb{R} = (-∞,∞), \emptyset = (0,0) \)などがある。

 次に\(U\)の外測度\(\mu^* (U) \)をすべての\(v_n ≠∞, u_n ≠ ∞\)のとき、

\( \mu^*(U) = (v_1-u_1)+(v_2-u_2)+…+(v_n-u_n)+…\)と定義することにする。

これは集合\(U\)のサイズを表している。

この無限級数が収束しないとき、いずれかの\(v_n=∞\)または\(u_n=-∞\)のときは、

\(\mu^*(U)=∞\)

と表すのも慣例である。

これはあくまで”\(U\)の速度はどの測度よりも大きい”という意味の便宜的表記になる。

これが「可算」とどう関係あるのかは悩む必要はなく、

明らかに、\(\mu^*(\emptyset ) =0, \mu^*(\mathbb{R}) =∞, \mu^* ((0,∞)) =∞\)などが成り立つ。

補題3.2 可算個の(有限個であっても)開集合\(U_1,U_2,U_3,…\)に対して、次が成り立つ:

\( \mu^* ( \bigcup_{n=1}^∞ U_n ) ≦ \sum_{n=1}^∞ \mu^* (U_n) \)

そして等号は\(U_1,U_2,U_3,…\)が互いに素なときに成り立つ。

証明は省略するが、こちらは何となく感覚的にもイメージはつくと思う。

 さて、以上は最も基本的な開集合の議論であった。

 次に一般の集合\(S \subset \mathbb{R} \)に対しては外測度\(\mu^* (S) \)は

\(S \subset U\)

となる開集合\(U\)のうち\(S\)を最もよく近似するものの外測度\(\mu^* (U) \)として定義する。

 これを正確に書くと、下記のようになる。

\(\mu^* (S) = \inf \{ \mu^* (U) : S \subset U, Uは開集合 \} \)

これは開集合の外測度の下限となるような一般集合を考えていることがわかる。

あくまで開集合ありきでの定義である。

この際、\(S \subset U \)となる開集合\(U\)が全ての外測度∞をもつなら

\(\mu^* (S) = ∞ \)

と定める。

 外測度は次の講で述べる測度とは異なり、どの集合に対しても計算できる。

そして定義からすぐに次が導かれる。

補題3.3

(1)\(S \subset T なら \mu^* (S) ≦ \mu^* (T) \)

(2)定数\(c\)に対して\(S+c= \{ x+c : x \in S \} \) とすると\( \mu^* (S) = \mu^* (S+c) \)

証明は省略するが、(1)は普通に理解できるだろう、(2)については単純に集合が平行移動しただけと考えれば理解が出来るだろう、例えば\(b-a=\mu^*([a,b])=\mu^*([a+c, b+c])=(b+c)-(a+c)\)みたいに、\(aからbまでの距離とa+cからb+cの距離は同じである\)。

 これによってすぐに分かることは、区間について、

 \(\mu ^* ((u,v)) =\mu ^* ([u,v]) =\mu ^* ((u,v]) =\mu ^* ([u,v)) =v-u\)

が成り立つことである。

 開区間\((u,v)\)については明らかである。

閉区間\([u,v]\)について考えてみる。これがわかれば、他も同様に考えることが出来る。

まず、\((u,v) \subset [u,v]\)より、

補題3.3の(1)より、

\(\mu^* ([u,v]) ≧ \mu^* ((u,v))=v-u \)・・・①

である。

そして、\([u,v] \subset (u-\frac{1}{2n},v+\frac{1}{2n})\)より、

\(\mu^* ([u,v]) ≦ \mu^* ( (u-\frac{1}{2n},v+\frac{1}{2n}))=(v+\frac{1}{2n})-(u-\frac{1}{2n})=(v-u)+\frac{1}{n} \)である。

両辺で\(n→∞\)とすれば、\(\mu^* ([u,v]) ≦v-u\)・・・②

①、②より、

\(\mu^* ([u,v]) =v-u\)

が得られる。□

補題3.4

集合\(S_1,S_2,…,S_n,…\)に対して、\(\mu^* ( \bigcup_{n=1}^∞ S_n ) ≦ \sum_{n=1}^∞ \mu^* (S_n) \)

証明は省略するが補題3.2,補題3.3を用いれば証明することができる。

系3.5 \(\mu^* (E) = 0なら、\mu^* (S \cup E) = \mu^*(S)\)

証明

\(\mu^* (S \cup E) ≧ \mu^*(S)\)は明らかである。

これは次から出る。

\(\mu^* (S \cup E) ≦ \mu^*(S) + \mu^*(E)=\mu^*(S)\)□

外測度0の集合

 次のセクション第4講や第5講でも関わる外測度0の集合の話は極めて重要なのでここでまとめて置く。

 1点だけからなる集合\(\{ c \} \)について、

\( \{ c \} \subset ( c – \frac{1}{n}, c+ \frac{1}{n}), n=1,2,…\)より、

\(\mu^* (\{ c \}) ≦ (c+\frac{1}{n})-(c-\frac{1}{n})=\frac{2}{n} \)となり、

\(n→∞\)より、

\(\mu^* (\{ c \}) = 0\)

となることがわかる。

 したがって、1点だけからなる可算集合の外測度は0である。

 実際\(S= \{ c_n : n=1,2,3,… \}\)とするとき、補題3.4において、

\(S_1=\{ c_1 \},S_2=\{ c_2 \},…,S_n=\{ c_n \},…\)と置くことで、外測度が0であることがわかる。

また、有限集合の外測度も0である。

可算集合である有理数全体\( \mathbb{Q} \)の外測度も0である。

 しかし、無理数全体\( \mathbb{P} \)の外測度は0ではありません。これは次の講でわかる話です。

ここではこれ以上深くは踏み込まないが、高級な事柄として、離散集合(discrete set)や疎集合(scattered set)、自己稠密集合や完全集合などがある。

 興味がある方は、ここら辺も調べておくとより理解を深めることが出来ると思います。

カントール集合

 補題3.3から外測度0の集合は区間を含まない。

しかし、だからと言っていつも可算とういうわけではない。

例として、カントールの3進集合と呼ばれる極めて重要な集合がある。

 これは閉区間\([0,1]\)の部分集合である。

 これは次のようにして構成される。

 まず\([0,1]\)を3等分し、中央の長さ\(\frac{1}{3}\)の開区間を取り除く。

次に残った両脇の区間を更に3等分し、中央の長さ\(\frac{1}{3^2}\)の開区間を取り除く。

…この操作を限りなく続けて得られる集合をカントールの3進集合と呼び、\(\mathscr{C}\)と表す。

参考URL:https://manabitimes.jp/math/1333

この集合の構成員は、

\( \sum_{n=1}^∞ \frac{c_n}{3^n} , c_n = 0 \) or \( 2\) …①

と表される実数である。

取り除かれる開区間の端点\(0,1,\frac{1}{3},\frac{2}{3},\frac{1}{3^2},\frac{2}{3^2},…\)は全て\(\mathscr{C}\)に属する。

この他に

\( \sum_{n=1}^∞ \frac{2}{3^{2n}}= \frac{1}{4}\), \(\sum_{n=1}^∞ \frac{2}{3^{2n-1}} = \frac{3}{4}\)

なども\(\mathscr{C}\)に属する。

これに対し、

\(\frac{1}{2} = \sum_{n=1}^∞ \frac{1}{3^{n}}\), \(\frac{5}{8} = \sum_{n=1}^∞ \frac{2}{3^{2n}}+\sum_{n=1}^∞ \frac{2}{3^{2n-1}} \)

などは\(\mathscr{C}\)に属さない。

 \(\mathscr{C}\)は閉区間\([0,1]\)からn段目で\(2^{n-1}\)個の開区間を取り除く。

それを左側から、\(B_{n,1},B_{n,2},…,B_{n,2^{n-1}}\)と表すと、

各\(i\)に対して、\(c_1,c_2,…,c_{n-1}= 0\) or \(2\)が定まり、

\(B_{n,i} = ( \sum_{k=1}^{n-1} \frac{c_k}{3^{k}} + \frac{1}{3^n}, \sum_{k=1}^{n-1} \frac{c_k}{3^{k}} + \frac{2}{3^n}) \)

である。

念のために付け加えれば、ここに\(n>1\)のとき、

\(i = \sum_{k=1}^{n-1} 2^{n-k-2} + 1 \)

\(\mathscr{C}\)は閉集合における開集合の補集合であるから、閉集合である。

\(\mathscr{C}\)は可算でないことは、その構成員①が0,2からなる数列

\(c_1,c_2,c_3,…\)

と1対1に対応することに注目して、

 第1段階の構成で\(\mathscr{C} \subset [0,\frac{1}{3}] \cup [\frac{2}{3},1]\)であるので、

補題3.3から、\( \mu^* (\mathscr{C}) ≦ 2・\frac{1}{3}=\frac{2}{3}\)である。

第2段階の構成で\(\mathscr{C} \subset [0,\frac{1}{3^2}] \cup [\frac{2}{3^2},\frac{1}{3}] \cup [\frac{2}{3},\frac{7}{3^2}] \cup [\frac{8}{3^2},1]\)であるので、

\( \mu^* (\mathscr{C}) ≦4・\frac{1}{3^2}=\frac{2^2}{3^2}\)である。

以下同様に考えれば第n段階目の構成から、\(\mu^* (\mathscr{C}) ≦ \frac{2^n}{3^n}\)が得られ、

\(n→∞\)を考えると、結局\(\mu^* (\mathscr{C}) = 0\)

となる。

結論として、カントールの3進集合のように点の集まりを考えていくと外測度は0である。

ルベーク積分その2 ルベーク積分その4
参考文献

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


SHARE