新卒二年目にして、大学生活を懐かしく思えるようになりました。
そんなとき、大学生時代、積分とは何だろうという疑問から、ルベーク積分に関する書籍を手にしたことがあります。
ただ、それを理解しきるまでの意欲は当時の私にはありませんでした。
ルベーク積分とはよくリーマン積分の拡張という言葉を聞きます。
これまでの私は何がリーマン積分で何がルベーク積分なのか気にした事もありませんでした。
私は車の精密な構造を知らずに運転をしている状態だったのです。
皆様も中にも私と同じようなことを経験している人はいるのではないでしょうか?
ルベーク積分やリーマン積分という言葉はいったん置いておき、
積分というものの考え方を見直すという意味で私は再度学習したいと思っております。
あくまで初学者の身なので、自分の理解したことを理解した通りに書かせて頂ければと思いますので、
優しい目線で見て頂きたいです。
- 高校まで使っていた積分
- ルベーク積分とは?
高校で学んだ積分は専門的にはリーマン積分と呼ばれるものです。
これはリーマンさんが提唱した積分になります。
復習としてどのような考え方だったか見ていきましょう。

例えば、ある関数\( f(x)\)について、区間\( [\alpha,\beta]\)の面積\(S\)を求めることを考えてみる。上図をみて頂けるとわかる通り、こういったものの面積を求めようとしたとき、短冊を並べて、その一つ一つの長方形の面積を求めればそれは\( S\)ぽくなる。さらに、この長方形一つ一つをもっと細かく区切って、作ってやれば、面積Sは求めたいものにさらに近づく。これを数式を使って表現をする。
まず、\( \alpha = x_0<x_1<x_2<\cdots<x_n=\beta\)を考える。
このとき、\( x_i \leq p_i \leq x_{i+1}, i= 0,1,\cdots,n-1\)とおくと、
面積は\(S=\sum\limits_{i=0}^{n-1}f(p_i)(x_{i+1}-x_i)\)と表せる。
これをリーマン和と呼ぶらしいです。
次に短冊を細かくしていく事を考えます。
つまり、\(\underset{i}{\max}(x_{i+1}-x_i)→0\)とするとき、
リーマン和が一定の極限に収束する状況を考えます。そのとき、数式では下記のように表します。
\(\int_{\alpha}^{\beta}f(x)dx\)
このとき関数\( f(x)\)は区間\( [\alpha,\beta]\)で積分可能ということにします。
私たちは大学受験の際はこの状況下のルールで色々と積分をしてきました。
ただ、この定義には幾つか問題点があります。
1つ目は関数\( f(x)\)が区間\( [\alpha,\beta]\)で有界でないと意味をなさないことにある。
例えば、\( f(x)\)に\( \alpha\)を代入したとき、これが発散するようなものだと面積が求められません。実例を使って考えましょう。
\([0,1]\)上で\(f(x) \geq 0\)が\(x=0\)で有界でないとき

\([0,1]\)のどのような分割
\( 0 = x_0<x_1<x_2<\cdots<x_n=1\)
をとっても、任意の定数\(k>1\)に対して内点\( x_0<p_0<x_1\)を
\(f(p_0)>\frac{k}{x_1}\)と取ることにすれば、リーマン和は下記のようになります。
\(\sum\limits_{i=0}^{n-1}f(p_i)(x_{i+1}-x_i) \geq f(p_0)(x_1-x_0)>\frac{k}{x_1}x_1\)
何が言いたいかというと、これはリーマン和はいくらでも大きくなるという事です。つまり、\(f(x)\)は積分可能ではないということを意味しております。
リーマンはこれの解決策として広義積分と呼ばれる手法で処理しております。
上記の例を使うと、\(f\)が\(x=0\)のみで有界でないとき、考え方としては、それっぽい有界な状態をつくって、最後に積分後極限をとってやることでかなりのものを積分可能として計算ができるという考え方です。数式で表現すると、\(\int_{0}^{1}f(x)dx=\lim_{\alpha \to +0}\int_{\alpha}^{1}f(x)dx\)
と定義されます。
2つほど例を使って考えて見ましょう。
一つ目、
\(\int_{0}^{1}\frac{dx}{\sqrt{x}}=\lim_{\alpha \to +0}\int_{\alpha}^{1}\frac{dx}{\sqrt{x}}=2\)
二つ目
\(\int_{0}^{\infty}e^{-x}dx=\lim_{b \to \infty}\int_{0}^{b}e^{-x}dx=1\)
簡単な計算なので、各々でやって貰いたいのですが、上記のように積分可能なものとしてこのように計算されます。ただ、緊急避難的な考え方にも見て取れるので有界でない関数も取り扱えるような定式化のようなものがあればというような感想も出てきますね。
もう一つの問題は項別積分によるものです。
関数の極限が与えられたときについて考えます。
\(f(x)=\lim_{n \to \infty}f_n(x)\) ①
これを両辺積分します。
\(\int_{\alpha}^{\beta}f(x)dx=\lim_{n \to \infty}(\int_{\alpha}^{\beta}f_n(x)dx)\)
ここで気になるのが、上式はそのまま計算して構わないかというところです。
更に、
\(\lim_{n \to \infty}(\int_{\alpha}^{\beta}f_n(x)dx)=\int_{\alpha}^{\beta}(\lim_{n \to \infty}f_n(x))dx\) ②
は成立するのかという問題も潜んでおります。この式を項別積分と呼びます。
この問題は19世紀に考えられていたらしく、①が普通の収束ではなく一様収束という概念のもとで成り立てば、②は解決するとのことです。
ここでは一様収束がどういったものなのか説明はしませんが、
問題点を述べると、①が一様収束か否かの検証が面倒、そして②が一様収束でない場合でも成立する場合があるなどがあります。
さて、こういった有界でない関数と項別積分に関する取扱いに対して合理的な解決案を出した方がいます。
それがルベーク(Henri Lebesgue)です。また、彼はどのような関数が積分可能なのかなど、様々な研究も行いました。
ルベーク積分の考え方を何となくわかった気にさせます。
言い換えれば、アウトラインを述べます。
なぜなら、ルベーク積分を理解するためには色々な準備が必要でほとんどの人はその準備で力尽きてしまうからです。
まず、これまで我々が学んできたリーマン積分はx軸上の定義域を考えましたが、ルベーク積分ではy軸上の値域を考えます。
どちらも同じ面積を求めますが、考え方が違うことに注意して頂きたいです。
関数\(f\)が有界である場合を考えます。
何らかの定数\(r<s\)に対して、\(f(x)\)の値域が\([r,s]\)に含まれる場合、
\(r=y_0<y_1<\cdots<y_n=s\)
を考えます。
そのときのxを\(Si=\lbrace x:y_i≤f(x)≤y_{i+1}\rbrace\)で表現します。そして、それぞれの\(S_i\)のサイズを何らかの方法で計測し、それを\(\mu\)と表します。
ここまでの状況を一度図にしてみましょう。

更に\(r=y_0<y_1<\cdots<y_n=s\)の全ての短冊について考えると面積は、
\(\sum\limits_{i=0}^{n-1}k_i・\mu(S_i)\)
となります。リーマン積分と同様に短冊を細かくし、極限をとると、つまり上式の和を一定の値に収束させそれを束ねたものが我々の求めたい面積となる訳である。何となく伝わったと思うが、それがルベーク積分である。
さて、このプロセスで問題となるのは、\(S_i\)のサイズ\(\mu(S_i)\)をどのようにして計測するかということである。ここら辺は次の講義で行う集合論の部分の勉強が必要になってくるが、なぜ、それを勉強しなければいけないのかっというのは何となく感覚的にでもわかってくれると思う。
例えば、上図のような左から右に滑らかにつながった関数ならば、各\(S_i\)はそれ自身が線分(実数上の区間)なので、もし関数\(y=-(y-1)^2+5\)のような単純なものだったら容易に各\(S_i\)は線分なので\(\mu(S_i)\)は求めることができる。
ただ、\(S_i\)が無限個の区間から成り立っていたり、孤立した点を含んでいたりすると、事態はそれほど単純ではなくなってしまう。
そこでルベークは測度という概念を考えました。我々はこの測度を集合論を通じて理解をすることでルベーク積分の奥深さを理解することになります。
実数集合\(S\)に何らかの方法で、数値
\(0≤\mu(S)≤∞\)
を対応させ測度(measure)と呼ぶことにします。
これがサイズを表す以上、常識的にいくつかの性質を満たす必要があります。
例えば、
・\(\mu([u,v])=\mu((u,v))=\mu((u,v])=\mu([u,v))=v-u\)
・\(\mu(\emptyset)=0, \mu(\mathbb{R})=∞\)
・\(S,T\)が離れたところに位置する集合なら\(\mu(S \bigcup T)=\mu(S)+\mu(T)\)
・\(S\)を平行移動した集合が\(T\)なら\(\mu(S)=\mu(T)\)
などが挙げられます。こちらは感覚的にも普通にわかると思います。
さて、サイズ\(\mu(S)\)をどのように計測するのかというのが重要なポイントでした。
これを求めるアイデアとしては、
まず集合\(S\)を外側から区間の和で近似していき究極のサイズとして外測度と呼ばれる\(\mu ^* (S)\)を求める。
次に内側から計測して内測度\(\mu_*(S)\)を求める。
そして、\(\mu ^* (S)=\mu_*(S)\)となるとき、内側からも外側からも計測して同じ値とわかります。
このとき計測可能と考え、\(\mu(S)\)と表せばよいという計画になります。
一応計画としては以上なのだがこれを実行しようとするといくつか問題にぶち当たります。
例えば、内測度の計測の仕方として\(S=[0,1]\)内の無理数全体の集合はどうやって計測をすればよいか。これには工夫が必要です。その他に有界でない関数\(f\)で出てくる問題点など色々と出てきます。
とはいえ、多くのことは学者たちによって理論整備がなされておりますので、ちゃんと参考書をゆっくり読んでかみ砕けば理解できます。
これまで一変数の実数直線上のみの関数を取り扱ってきましたが、ルベーグの理論は、多変数関数や複素関数にも適用されます。
これから測度について理解していくために集合論の準備から始めていきます。
では、次の講義でお待ちしております☆
